Takatani Note

同相写像【例題と証明】

この記事では、下記の例題を扱います。

今回は問題をたくさん揃えました。
どれも基本的なので、すべて解けるようになっておきましょう。

以下, $\R^n$ には通常の位相が入っているとし, $\R^n$ の部分集合には $\R^n$ の相対位相が入っているとします。

まずは同相写像の定義を確認します。

定義
$X,Y$ を位相空間とする.
$f:X\to Y$ が全単射な連続写像であり, 逆写像 $f^{-1}$ も連続であるとき, $f$ を同相写像 (homeomorphism) という.

$X$ から $Y$ への同相写像が存在するとき, $X$ と $Y$ は同相であるといい, $X\cong Y$ で表す.

※全単射な連続写像でも, それが同相写像とは限らない. (すなわち, その逆写像は連続であるとは限らない.)
例を2つ挙げよう.


離散空間 $\R$ から密着空間 $\R$ への恒等写像は全単射な連続写像である. しかし, その逆写像は連続でない.


$S^1$ を単位円とする.
$f:[0,2\pi)\to S^1$ を $f(\t)=(\cos\t,\sin\t)$ と定義すると, $f$ は全単射な連続写像である.
しかし, 逆写像 $f^{-1}$ は連続でない.

証明
[証明]
「逆写像 $f^{-1}$ は連続でない」は「$f$ は開写像でない」に言い換えられることに注意しよう.
$[0,\pi)$ は $[0,2\pi)$ の開集合だが, $f([0,\pi)$ は $S^1$ の開集合でない.
したがって, $f$ は開写像でないので, $f$ は同相写像でない.

【例題】同相写像であることを示す問題

例題
双曲線 $xy=1$ を $C$ とすると, $C\cong \R\sm\{0\}.$

証明
[証明]
$f:\R\sm\{0\}\to C$ を $f(x)=(x,1/x)$ で定めると, $f$ は全単射な連続関数である.
$f$ の逆関数 $f^{-1}((x,y))=x$ も連続なので, $f$ は同相写像である.
よって, $C\cong \R\sm\{0\}.$


$\R$ において, $(0,1)\cong (1,\infty).$
ここで, $(1,\infty)$ は $1$ より大きい実数全体を表す.

証明
[証明]
$f:(0,1)\to (1,\infty)$ を $f(x)=1/x$ で定めると, $f$ は全単射な連続関数である.
$f$ の逆関数 $f^{-1}(x)=1/x$ も連続なので, $f$ は同相写像である.
よって, $(0,1)\cong (1,\infty).$


$\R$ において, $(-1,1)\cong \R.$

証明
[証明]
$f:(-1,1)\to \R$ を $f(x)=\tan(\pi x/2)$ で定めると, $f$ は全単射な連続関数である.
$f$ の逆関数 $f^{-1}(x)=(2/\pi)\arctan x$ も連続なので, $f$ は同相写像である.
よって, $(-1,1)\cong \R.$


$(0,\infty)\cong \R.$
ここで, $(0,\infty)$ は $0$ より大きい実数全体を表す.

証明
[証明]
$f:(0,\infty)\to \R$ を $f(x)=\log x$ で定めると, $f$ は全単射な連続関数である.
$f$ の逆関数 $f^{-1}(x)=e^x$ も連続なので, $f$ は同相写像である.
よって, $(0,\infty)\cong \R.$

同相でない例

例題
$\R$ と $\R\sm \{0\}$ は同相でないことを示せ.

証明
[証明]
$\R$ は連結だが $\R\sm \{0\}$ は連結でない. 従って, $\R\not\cong \R\sm\{0\}.$

例題
閉区間 $[0,1]$ と単位円 $S^1$ とは同相でないことを示せ.

証明
[証明]
$[0,1]$ と $S^1$ は同相であると仮定する.
$f:[0,1]\to S^1$ を同相写像として, $p\in (0,1)$ を任意にとる.
このとき, $[0,1]\sm \{p\}$ と $S^1\sm \{p\}$ も同相であるはずである.
しかし, 前者は連結でないが, 後者は連結である.
これは矛盾する.


単位円 $S^1$ と $\R$ は同相でないことを示せ.

証明
[証明]
$S^1$ はコンパクトだが $\R$ はコンパクトでない.
従って, $S^1$ と $\R$ は同相でない. $\square$

別解
同相写像 $f:\R \to S^1$ が存在すると仮定する.
すると, $0$ と $f(0)$ を取り除いた写像:
$\ \ \ \R\sm\{0\} \to S^1\sm\{f(0)\}$
も同相写像になる.
従って, $\R\sm\{0\} \cong S^1\sm\{f(0)\}.$
しかし, $\R\sm\{0\}$ は連結である一方, $S^1\sm\{f(0)\}$ は連結である.
これは矛盾する.


半開区間 $(0,1]$ と 開区間 $(0,1)$ は同相でないことを示せ.

証明
[証明]
同相写像 $f:(0,1] \to (0,1)$ が存在すると仮定する.
すると, $1$ と $f(1)$ を取り除いた写像:
$\ \ \ (0,1)\to (0,f(1))\cup (f(1),1)$
も同相写像になる.
従って, $(0,1)\cong (0,f(1))\cup (f(1),1).$
しかし, 左辺は連結なのに右辺は連結でない.
これは矛盾する.


$\R$ と $\R^2$ は同相でないことを示せ.

証明
[証明]
同相写像 $f:\R^2\to \R$ が存在すると仮定する.
$p=(0,0),\ q=f(p)$ とおく.
このとき, $p$ と $q$ を取り除いた写像:
\[ \R^2\sm\{p\}\to \R\sm\{q\} \] も同相写像になる.
従って, $\R^2\sm\{p\}\cong\R\sm\{q\}.$
しかし, $\R^2\sm\{p\}$ は連結なのに $\R\sm\{q\}$ は連結でない.
これは矛盾する.

問題
$\R$ と $xy=0$ ($x$ 軸と $y$ 軸の和集合) は同相でないことを示せ.

証明
[証明]
同相写像 $f:\R\to (xy=0)$ が存在すると仮定する.
このとき, 原点 $O$ と $f(O)$ を取り除いても, $f$ の制限写像 $\R\sm\{f(O)\}\to (xy=0)\sm\{O\}$ は同相写像である.
ところが, $\R\sm\{f(O)\}$ の連結成分は2個, $(xy=0)\sm\{O\}$ の連結成分は4個である.
連結成分が一致していないので両者は同相でない.
よって, 矛盾が導かれた.


$\R^2\not\cong\R^3$

証明
[証明]
同相写像 $f:\R^2\to \R^3$ が存在すると仮定する.
$p=(0,0),\ q=f(p)$ とおく.
このとき, $p$ と $q$ を取り除いた写像も同相写像になる.
従って, $\R^2\sm\{p\}\cong\R^3\sm\{q\}.$
しかし, 右辺は単連結なのに左辺は単連結でない.
これは矛盾する.