連結でないことを示す問題
この記事では、位相空間が連結でないことを示す問題を扱います。
以下, $\R^n$ には通常の位相(ユークリッド位相)が入っているとします。
まずは連結の定義を確認しておきましょう。
定義
$(X,\O)$ を位相空間とする.
$\emp$ と $X$ 以外に, 開集合かつ閉集合であるような
($X$ の)部分集合が存在しないとき, $X$ は連結
(connected)であるという.
連結でないことを示すのに、次の定理をよく使います。
定理A
$X,Y$ を位相空間, $f:X \to Y$ を連続写像とする.
$X$ が連結ならば, $f(X)$ も連結である.
[証明]
$f(X)$ が連結でないとすれば, $Y$ の開集合 $O_1,O_2$ で,
\[\eq{
& f(X) \sub O_1\cup O_2,
\\ & O_1\cap O_2 \cap f(X)=\emp,
\\ & O_1\cap f(X)\neq \emp,
\\ & O_2\cap f(X) \neq \emp
}\]
となるものが存在する. 上の2つの式から明らかに
\[\eq{
& X=f^{-1}(O_1)\cup f^{-1}(O_2),
\\ & f^{-1}(O_1)\cap f^{-1}(O_2) =\emp
}\]
が得られ, また下の2つの式から
$f^{-1}(O_1)\neq \emp, \ \ f^{-1}(O_2) \neq \emp$
が得られる.
$f$ は連続であるから,
$f^{-1}(O_1),\ \ f^{-1}(O_2)$
は $X$ の開集合である.
これは $X$ が連結であることに矛盾する.
※[松坂 5章定理1]または[内田 定理25.1]に証明がある.
連結でないことを示す問題
問題
双曲線 $C:xy=1$ は連結でないことを示せ:
\[ C=\{(x,y)\in \R^2\mid xy=1 \} \]
[証明]
$f:C\to \R,$
$\ \ (x,y)\mapsto x$
とすると, $f$ は連続である.
連続像 $f(C)=\R\sm\{0\}$ は連結でないので,
定理Aより, $C$ も連結でない.
補足
$f:C\to \R$ が連続写像である理由:
$f:\R^2\to \R$ を $f(x,y)=x$ で定めると
$f$ は連続である.
$f$ の定義域を $C$ に制限した写像 $f|_C$
も連続であることが相対位相の定義からわかる.
したがって, $f:C\to \R$ は連続である.
なお, 上の例は次のように高次元に一般化できる.
問題
$X:xyzw=1 \subset \R^4$ は連結でないことを示せ.
[証明]
$f:X\to \R,\ $
$(x,y,z,w)\mapsto x$ とすると, $f$ は連続である.
連続像 $f(X)=\R\sm\{0\}$ は連結でないので, $X$ も連結でない.
問題
$\Q$ は連結でないことを示せ.
[証明]
\[ U=(-\sqrt{2},\sqrt{2})\cap \Q\]
は $\Q$ の開集合である.
\[ U=[-\sqrt{2},\sqrt{2}]\cap \Q\]
より, $U$ は $\Q$ の閉集合でもある.
従って, $U$ は開かつ閉なので $\Q$ は連結でない.
問題
一般線形群 $\GL_n(\R)$ は連結でないことを示せ.
[証明]
一般線形群の性質を参照してください.
問題
直交群 $O(n)$ は連結でないことを示せ.
[証明]
直交群と特殊直交群【問題と証明】を参照してください.
【付録】単連結な空間の商空間は必ずしも単連結でない
連結な空間の商空間は連結である.
実際, 自然な全射 $p:X⟶X/\!\sim$ は連続写像なので,
定理Aより, $X$ が連結ならば $X/\!\sim$ も連結である.
しかし,「単連結」な空間の商空間は必ずしも「単連結」でない.
問題
$X$ を単連結な位相空間とする.
$X$ のある商空間が単連結でない例を見つけよ.
正方形
\[ X:=\{(x,y)\in \R^2 \mid |x|\leq 1,\ |y|\leq 1\} \]
は単連結である.
しかし, 正方形の対辺を(ねじることなく)貼り合わせることによってドーナツにする商空間 $X/\!\sim$ を考えると,
$X/\!\sim$ は単連結でない.