Takatani Note

固有値と固有ベクトル【例題】

この記事では,
・固有値と固有ベクトルを求める問題
・行列を対角化させる問題
を扱います。

問題の前に, 固有値や固有空間などの概念を復習します。
以下, $K$ を $\R$ や $\C$ などの体とします。

固有値・固有ベクトル・固有空間

固有値・固有ベクトルの定義

定義
正方行列 $A$ に対して,
\[ Av=\l v,\ \ \ (v\neq 0) \] を満たす $\l\in \C$ とベクトル $v$ が存在するとき, $\l$ を $A$ の固有値といい, $v$ を $l$ の固有ベクトルという.

固有方程式

固有値を求めるには次の定理を用いる.

定理
$n$ 次正方行列 $A$ に対して, 次の2条件は同値である.
(1) $\l$ が $A$ の固有値である.
(2) $|A-\l I|=0.$
ここで, $I$ は $n$ 次単位行列である.

証明
[証明]
$\l$ が $A$ の固有値ならば, $Av=\l v$ を満たす0でないベクトル $v\in \C^n$ が存在する.
このとき,
$\ \ \ (A-\l I)v=0$
であり, かつ $v\neq 0$ なので,
$\ \ \ |A-\l I|=0.$

逆に, $|A-\l I|=0$ のとき, 行列 $A-\l I$ の階数は $n$ 未満なので, $(A-\l I)v=0$ を満たす $v\neq 0$ が存在する.
したがって, $\l$ は $A$ の固有値である.

$|A-\l I|=0$ を $A$ の固有方程式という.

固有空間

定理
$A$ を $n$ 次正方行列とし, $\l$ を $A$ の固有値とする.
\[ V(\l)=\{v\in K^n\mid Av=\l v\}\] と定義する.
このとき, $V(\l)$ は $V$ の部分空間である.

証明
[証明]
$v=0$ のときも $Av=\l v$ を満たすので, $0\in V(\l)$ である.

$u,v\in V(\l),\ k\in K$ に対して,
$\ \ \ A(u+v)=Au+Av=\l u+\l v=\l(u+v)$
したがって, $u+v\in V(\l).$

$v\in V(\l),\ k\in K$ に対して,
$\ \ \ A(kv)=k(Av)=k(\l v)=\l(kv).$
ゆえに, $kv\in V(\l).$

よって, $V(\l)$ は $V$ の部分空間である.

定理における $V(\l)$ を $A$ の固有値 $\l$ に属する固有空間という.

固有値と固有ベクトル【例題】

例題
$A=\m{ 2 & 1 \\ 1 & 2 }$ の固有値と固有ベクトルを求めよ.

解答
[解答]
$\l$ を $A$ の固有値とする.
\[ |A-\l I|=\md{ 2-\l & 1 \\ 1 & 2-\l } =(\l-1)(\l-3)=0\] より, $\l=1,3$ である.

$\l=1$ の固有ベクトル $\bm{x}$ は
\[ (A-I)\bm{x}= \m{ 1 & 1 \\ 1 & 1 } \m{ x_1 \\ x_2}=\m{0 \\ 0} \] の非自明解である.
これより, $x_1+x_2=0$ なので, $x_1=c$ とすると, $x_2=-c$ であるから,
\[ x=\m{x_1 \\ x_2 }=c\m{1 \\ -1} \ \ (c\neq 0). \]
$\l=3$ の固有ベクトル $\bm{x}$ は
\[(A-3I)\bm{x}=\m{-1 & 1 \\ 1 & -1 } \m{x_1 \\ x_2}= \m{0 \\ 0 } \] の非自明解である.
これより, $-x_1+x_2=0$ なので, $x_1=c$ とすると, $x_2=c$ であるから,
\[ x=\m{x_1 \\x_2 }=c\m{1\\ 1}\ \ (c\neq 0). \s \]

例題
$A=\m{1 & 1 & 1 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 2 }$ の固有値と固有ベクトルを求めよ.

解答
[解答]
$A$ の固有値 $\l$ は
\[ |A-\l I|= \m{1-\l & 1 & 1 \\ 0 & 2-\l & 0 \\ 0 & 0 & 2-\l } =(\l-2)^2(\l-1)=0\] を満たすので $\l=2,1$ である.

$\l=2$ の固有ベクトル $\bm{x}$ は
\[(A-2I)\bm{x}= \m{-1 & 1 & 1 \\ 0 & 0 & 0 \\ 0 & 0 & 0 } \m{x_1 \\ x_2 \\ x_3}= \m{0 \\ 0 \\ 0}\] の非自明解である.
これより, $-x_1+x_2+x_3=0$ なので, $x_1=c_1,\ x_2=c_2$ とすると, $x_3=c_1-c_2$ であるから,
\[ x=\m{x_1 \\x_2\\x_3} =c_1\m{1 \\0 \\1} +c_2\m{0 \\1 \\-1} \] ただし, $c_1\neq 0$ または $c_2\neq 0$ である.

$\l=1$ の固有ベクトル $\bm{x}$ は
\[ (A-I)\bm{x}= \m{0 & 1 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 0 & 0 & 1}\m{x_1 \\x_2 \\x_3}=\m{0\\0\\0} \] の非自明解である.
これより, $x_2=x_3=0$ なので, $x_1=c$ とすると, $x_2=c$ であるから,
$x=\m{x_1 \\x_2 \\x_3} =c\m{1 \\0\\0}\ \ (c\neq 0).$
[終了]

対角化の方法

例題
次の正方行列を対角化せよ.
$A=\m{1 & 1 & 1 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 2 }$

解答
[解答]
$\l$ を $A$ の固有値とする. \[\eq{ & |A-\l I|=0 \\ \iff &(\l-2)^2(\l-1)=0\\ \iff & \l=2,1 }\] より, $\l=2,1$ である.

固有空間 $V(2)$ と $V(1)$ は計算すると下記のとおり.
\[ v_1=\m{1 \\0 \\1},\ \ v_2=\m{0\\1\\-1}, \ \ v_3=\m{1 \\0 \\0}\] と定めると, \[ V(2)=\langle v_1,v_2 \rangle,\ \ V(1)=\langle v_3 \rangle.\]
3つの固有ベクトル $v_1,v_2,v_3$ を並べた3次行列を $P$ とする. すなわち,
\[ P=\m{1 & 0 & 1 \\ 0 & 1 & 0 \\ 1 & -1 & 0 } \] とする. このとき, $P^{-1}AP$ は次のように対角行列になる.
\[ P^{-1}AP=\m{2 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 }. \]

対角化するまでの流れ

対角化するまでの流れを簡単にまとめておこう.
わかりやすくするため, 上の問題より一般的な条件の下で考える.

ステップ1
$A$ の固有多項式を計算し, 固有値を求める.
$(x-2)^2(x-1)=0$
$\therefore \l=2, 1$

ステップ2
それぞれの固有値に対して, その固有空間を求める.
$V(2)=< v_1, v_2 >,$
$V(1)=< u >.$

ステップ3
各々の固有空間の次元の総和が行列 $A$ の次数に等しいか確かめる.
\[ \dim V(2)+ \dim V(1)=2+1=3\] より, $A$ は対角化可能である.

ステップ4
各々の固有空間から基底をとりだして, それら $n$ 個の固有ベクトルを並べて変換行列 $P$ をつくる.
すると, $P^{-1}AP$ は対角行列になる.
$\ \ \ P=(v_1\ v_2\ u)$
とおけば,
\[ \eq{ AP & =(Av_1\ Av_2\ Au) \\ & =(2 v_1\ 2 v_2\ u) \\ &=P \m{2 & 0 & 0 \\ 0 & 2 & 0 \\ 0 & 0 & 1 }. }\] よって, $P^{-1}AP$ は上の対角行列となる.