この記事では、LaTeXで極限 $\lim$ を出力する方法を紹介します。
最初に、主要なコマンドを表にまとめておきます。
表示 | コマンド | タイプ |
---|---|---|
$\lim$ | \lim | 極限 |
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}$ | \lim_{n \to \infty} |
|
$\varlimsup$ | \varlimsup | 上極限 |
$\limsup$ | \limsup | |
$\varliminf$ | \varliminf | 下極限 |
$\liminf$ | \liminf | |
$\varprojlim$ | \varprojlim | 射影極限 |
$\projlim$ | \projlim | |
$\varinjlim$ | \varinjlim | 帰納極限 |
$\injlim$ | \injlim |
下記の表は極限でよく使われる記号です。
表示 | コマンド | 意味 | 表示 | コマンド | 意味 | |
---|---|---|---|---|---|---|
$\sup$ | \sup | 上限 | $\inf$ | \inf | 下限 | |
$\max$ | \max | 最大 | $\min$ | \min | 最小 | |
$\to$ | \to | 矢印 | $\infty$ | \infty | 無限大 |
※矢印については【LaTeX】矢印を参照。
以下、詳しく説明していきます。
極限 $\lim$ を出力するには\lim
を使います:
\lim_{n \to \infty} a_n
\lim_{x \to a} f(x)
$\ds\lim_{n \to \infty} a_n\ \ \ $ $\ds\lim_{x \to a} f(x)\ \ \ $
上極限 $\limsup,\ \varlimsup$ を出力するには\limsup, \varlimsup
を使います。
\limsup_{n \to \infty} a_n
\varlimsup_{n \to \infty} a_n
\lim_{n \to \infty}\left( \sup_{k \geq n} a_k \right)
$\ds\limsup_{n \to \infty} a_n\ \ \ $ $\ds\varlimsup_{n \to \infty} a_n\ \ \ $ $\ds\lim_{n \to \infty}\left( \sup_{k \geq n} a_k \right)$
※\geq
は $\geq$ を表すコマンド(→【LaTeX】不等号)。
※\left( \right)
は( )
を表し,
括弧の大きさを(括弧の中身に応じて)自動で調節してくれるコマンド(→【LaTeX】括弧)。
下極限 $\liminf,\ \varliminf$ を出力するには\liminf, \varliminf
を使います。
\liminf_{n \to \infty} a_n
\varliminf_{n \to \infty} a_n
\lim_{n \to \infty}\left( \inf_{k \geq n} a_k \right)
$\ds\liminf_{n \to \infty} a_n\ \ \ $ $\ds\varliminf_{n \to \infty} a_n\ \ \ $ $\ds\lim_{n \to \infty}\left( \inf_{k \geq n} a_k \right)$
$\lim$ の下に $n\to \infty$ を添えるには下記のように出力します。
表示 | コマンド | タイプ |
---|---|---|
$\displaystyle\lim_{n \to \infty}$ | \lim_{n \to \infty} | ディスプレイスタイル |
$\lim_{n \to \infty}$ | \lim_{n \to \infty} | テキストスタイル |
上記のとおり、$n\to \infty$ の位置がディスプレイスタイル(数式)とテキストスタイル(文中)では違うことに注意してください。
\displaystyle
と\limits
文中でも $\displaystyle\lim_{n \to \infty}a_n$
のようにディスプレイスタイルで表示させたければ\displaystyle
、または\limits
を使います。
表示 | コマンド |
---|---|
$\displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n$ | \displaystyle\lim_{n \to \infty} a_n |
$\lim\limits_{n \to \infty} a_n$ | \lim\limits_{n \to \infty} a_n |
両者の違いを理解するために次のサンプルを見てください。
\displaystyle\lim_{n \to \infty} \lim_{x\to 0}
\lim\limits_{n \to \infty} \lim_{x\to 0}
$\displaystyle\lim_{n \to \infty} \lim_{x\to 0}$
$\lim\limits_{n \to \infty} \lim_{x\to 0}$
上記のとおり。前者の場合、\displaystyle
の後に続く記号はすべてディスプレイスタイルになります。後者の場合、\limits
が付いた $\lim$ だけディスプレイスタイルになります。
※\displaystyle
でも\limits
のように特定の記号だけディスプレイスタイルにしたいのであれば、その記号を{ }
で囲みます。
{\displaystyle\lim_{n \to \infty} } \lim_{x\to 0}
${\displaystyle\lim_{n \to \infty} }\lim_{x\to 0}$
\textstyle
と\nolimits
逆に、数式環境で $\lim_{n \to \infty}a_n$ のようにテキストスタイルで表示させたければ\textstyle
または\nolimits
を用います。
表示 | コマンド |
---|---|
$\textstyle\lim_{n \to \infty} a_n$ | \textstyle\lim_{n \to \infty} a_n |
$\lim\nolimits_{n \to \infty} a_n$ | \lim\nolimits_{n \to \infty} a_n |
両者の違いはディスプレイスタイルと同様です。
つまり、前者の場合、\textstyle
の後に続く記号はすべてテキストスタイルになります。後者の場合、\nolimits
が付いた $\lim$ だけテキストスタイルになります。
$\ds\lim_{\substack{x \to 0 \\ y \to 0}}$ のように $\lim$
の下に複数行にわたる記号を挿入する場合は
\substack
を使います:
A \substack{\to \\ \to} B
A \substack{\to \\ \to \\ \to} B
\lim_{\substack{x \to 0 \\ y \to 0}} f(x,y)
$\ds A \substack{\to \\ \to} B\ \ \ $
$\ds A \substack{\to \\ \to \\ \to} B\ \ \ $
$\ds \lim_{\substack{x \to 0 \\ y \to 0}} f(x,y)$
※\\
は改行コマンド。