この記事では $\LaTeX$ で絶対値 $|x|$ とノルム $\|x\|$ を出力する方法を紹介します。
最初に、主要なコマンドを表にまとめておきます。
| 表示 | コマンド | 備考 |
|---|---|---|
| $|x|$ | |x| | $x$ の絶対値 |
| $\lvert x \rvert$ | \lvert x \rvert | amsmathパッケージが要る |
| $\| A \|$ | \| A \| | $A$ のノルム |
| $\lVert A \rVert$ | \lVert A \rVert | amsmathパッケージが要る |
以下、詳しく説明していきます。
LaTeXで絶対値 $|x|$ を出力するには、基本的にはパイプ「|」を用います。
|x|
$|x| $
パイプ|ではなく, \lvertおよび\rvertでも絶対値を表示できます:
\lvert x \rvert
$|x| $
※amsmathパッケージが要る。
パイプ|だけで絶対値が表示できるのに\lvert,\rvertがあるのか?
という疑問については記事の最後に説明します。
$\left| \frac{a}{b} \right|$
$\ds \left| \frac{a}{b} \right| $
このコードでは、\left|と\right|を使用して、絶対値記号の高さを内部の式に合わせて自動調整します。これにより、内部の式が高さに合わせて適切に括弧で囲まれます。
パイプ「|」の長さを自動調節ではなく、手動調節するなら、
\big,\Big,\bigg,\Biggを用います。
詳細記事:括弧(かっこ)
LaTeXでノルム $\|x\|$ を出力するには、\|を用います。
\|x\|
$\|x\| $
パイプ\|ではなく, \lVertおよび\rVertでも絶対値を表示できます:
\lVert x \rVert
$\lVert x \rVert $
※amsmathパッケージが要る。
\left\| \frac{a}{b} \right\|
$\ds \left\| \frac{a}{b} \right\| $
このコードでは、\left\|と\right\|を使用して、ノルム記号の高さを内部の式に合わせて自動調整します。これにより、内部の式が高さに合わせて適切に括弧で囲まれます。
二重線 $\|$ の長さを自動調節ではなく、手動調節するなら、
\big,\Big,\bigg,\Biggを用います。
詳細記事:括弧(かっこ)
ベクトル $\boldsymbol{x}$ のように文字を太字にするには \boldsymbolを用います。
関連記事:【LaTeX】ベクトル
| \boldsymbol{x} |
\| \boldsymbol{x} \|
$
| \boldsymbol{x} | $
$
\| \boldsymbol{x} \|
$
\lvert、\lVertがあるのか?amsmathパッケージにはコマンド\lvert,\rvert,\lVert,\rVert、\midによってパイプ「|」の上書き問題に対処しています。
記号「|」は多くの数学関係式で使われています。例えば
などがあります。これらを一つの記号で表すことはそれほど悪いことではありません。 しかし、縦棒が連続して出てくる場合、その縦棒が何を意味するのか識別しにくいときがあります。たとえば $$ \{ |f(x)| | x\in \mathbb{R} \} $$ という集合をLaTeXで記述する場合、
\{ |f(x)| | x\in \mathbb{R} \}
だと、どの縦棒が区切り線か少し識別しにくいです。 一方、区切り線を表すのに\midを用いれば、
\{ |f(x)| \mid x\in \mathbb{R} \}
となります。こっちのほうが、読者にとって識別しやすいコードのはずです。
このように、縦棒をできるだけ区別しやすくしたいのです。 そこで、絶対値記号 $|\cdot|$ は縦棒を2本使うので、 左と右で分けるために\lvertと\rvertを使うのが望ましいです。
とは言っても、絶対値を出力するために\lvertと\rvertを毎回使うのはめんどうです。そこで、マクロをおすすめします。 次のように記述します。
\newcommand{\abs}[1]{\lvert #1 \rvert}
\newcommand{\norm}[1]{\lVert #1 \rVert}
こうすれば、\abs{x}と入力すれば、
$x$ の絶対値 $|x|$ が出力します。