Takatani Note

ラーベの判定法【証明と例題】

$$ \newcommand{\att}{\bm{a}} $$

この記事では、ラーベの判定法(Raabe's test)を扱います。

注意
以下、$\ds\sum_{n=1}^\iy$ を $\sum$ で表すことがあります。

ラーベの判定法

定理 (ラーベの判定法)
正項級数 $\sum a_n$ について, $$ \lim_{n\to \iy} n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri)=r $$ が存在するとき, $r >1$ ならば収束し, $r < 1$ ならば発散する.

証明
[証明]
$\def\Ra{\Rightarrow\ }$ $r>1$ の場合:
$r> \l > 1$ となる $\l\in\R$ をとる.
仮定より, 十分大きな $N\in\N$ が存在して, $n\geq N$ のとき, $$\eq{ & n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) > \l \\ \Ra & n(a_n-a_{n+1}) > \l a_{n+1} \\ \Ra & na_n-(n+1)a_{n+1} > (\l-1)a_{n+1} }$$ が成り立つ. ゆえに, $n \geq N$ のとき, $$\eq{ (\l-1)\sum_{n=N}^m a_{n+1} & < \sum_{n=N}^m \Big( na_n-(n+1)a_{n+1} \Big) \\ & =Na_N-(m+1)a_{m+1} \\ & < Na_N. }$$ $$ \th \sum_{n= N}^\iy a_{n+1} \leq \f{Na_N}{\l-1} $$ $\f{Na_N}{\l-1}$ は定数なので, $\sum a_n$ は収束する.

$r < 1$ の場合:
仮定より, 十分大きな $N\in\N$ が存在して, $n\geq N$ のとき, $$\eq{ & n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) < 1 \\ \Ra & n(a_n-a_{n+1}) < a_{n+1} \\ \Ra & na_n < (n+1)a_{n+1} }$$ が成り立つ. ゆえに, $n \geq N$ のとき, $$ Na_N <(N+1)a_{N+1} < \cd < na_n. $$ $$ \th \f{Na_N}{n} < a_n\ \ \ (\all n \geq N). $$ $Na_N$ は定数であり, $\sum\tf{1}{n}$ は 発散する. よって, 比較判定法より $\sum a_n$ も発散する.

上の定理では $r=1$ の場合はわからない.
$r=1$ のときを知りたいときは次の定理が有用である.

定理 ($r=1$)
正項級数 $\sum a_n$ について, ある $N\in\N$ が存在して, $n\geq N$ のとき, $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) \leq 1 $$ が成り立つならば $\sum a_n$ は発散する.

証明
[証明]
証明はラーベの判定法の $r<1$ の場合と同様である.

仮定より, 十分大きな $N\in\N$ が存在して, $n\geq N$ のとき, $$\eq{ & n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) \leq 1 \\ \Ra & na_n \leq (n+1)a_{n+1} }$$ が成り立つ. ゆえに, $$ \f{Na_N}{n} \leq a_n\ \ \ (\all n \geq N). $$ $\sum\tf{1}{n}$ は発散するので, $\sum a_n$ も発散する.

例題
$\sum \f{1}{n^s}\ (s\in \R)$ の収束・発散を調べよ.

解答
[解答]
$a_n=\f{1}{n^s}\ (s\in \R)$ とする. $f(x)=x^s$ とおくと, $$\eq{ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) & =n\le( \Big(\f{n+1}{n}\Big)^s -1 \ri) =\f{\Big( 1+\f{1}{n}\Big)^s -1}{\f{1}{n}} \\ & =f'(1)=s\ \ \ (n\to \iy). }$$ よって, ラーベの判定法より, $\sum a_n$ は $s>1$ のときに収束し, $s<1$ のとき発散する.

$s=1$ のとき, 常に $a_n=1$ なので, すべての $n\in\N$ に対して $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) =0 \leq 1. $$ よって, $s=1$ のとき, $\sum a_n$ は発散する.

例題
次の級数の収束・発散を調べよ. $$ \sum\f{(2n-1)!!}{(2n)!!}=\f{1}{2} +\f{1\c 3}{2\c 4}+\f{1\c 3\c 5}{2\c 4\c 6} +\cd $$

解答
[解答]
$a_n=\f{(2n-1)!!}{(2n)!!}$ とおくと, $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) =n\le( \f{2n+2}{2n+1} -1 \ri) =\f{n}{2n+1} \to \f{1}{2}\ \ \ (n\to \iy). $$ したがって, ラーベの判定法より, $\sum a_n$ は発散する.

例題
$a,b>0$ として, 次の級数の収束・発散を調べよ. $$ \f{b}{a}+\f{b(b+1)}{a(a+1)} +\f{b(b+1)(b+2)}{a(a+1)(a+2)}+\cd $$

解答
[解答]
$$ a_n=\f{b(b+1)\cd (b+n-1)}{a(a+1)\cd (a+n-1)} $$ とおくと, $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) =\f{(a-b)n}{n+b} =\f{a-b}{1+\tf{b}{n}} \to a-b\ \ \ (n\to \iy). $$ したがって, ラーベの判定法より, $\sum a_n$ は $a-b>1$ のとき収束し, $a-b<1$ のとき発散する.

$a-b=1$ のとき, すべての $n\in\N$ に対して $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) =\f{1}{1+\tf{b}{n}} \leq 1. $$ よって, $a-b=1$ のとき $\sum a_n$ は発散する.

交代級数への応用

補題
正項級数 $\sum a_n$ について, $$ \lim_{n\to \iy} n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri)=r $$ が存在するとき, $r>0$ ならば $\ds\lim_{n\to\iy} a_n=0.$

証明
[証明]
$r> \l > 0$ となる $\l\in\R$ をとる.
仮定より, 十分大きな $N\in\N$ が存在して, $n\geq N$ のとき, $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) > \l > 0. $$ $$ \th a_n > a_{n+1} \ \ \ (\all n\geq N). $$ 従って, 数列 $\{a_n\}$ は $n\geq N$ のとき単調減少であり, $a_n >0$ から下に有界なので, ある実数 $x\geq 0$ に収束する. $x=0$ であることを背理法で示そう.
$x\neq 0$ と仮定する. $n \geq N$ のとき, $a_n > x$ なので, $$ \f{n(a_n-a_{n+1})}{x} >\f{n(a_n-a_{n+1})}{a_{n+1}} =n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) > \l. $$ $$ \th a_n-a_{n+1}>\f{x\l}{n} \ \ \ (\all n\geq N). $$ したがって, $$\eq{ a_{n+1}-a_{2n+1} & =(a_{n+1}-a_{n+2})+(a_{n+2}-a_{n+3}) +\cd + (a_{2n}-a_{2n+1}) \\ & > x\l\le(\f{1}{n+1}+\f{1}{n+2} +\cd+ \f{1}{n+n} \ri) \\ & > \f{1}{2n}\c n =\f{1}{2}. }$$ ゆえに, $\{a_n\}$ はコーシー列でない.
ところが, $\{a_n\}$ は収束するのでコーシー列のはずである.
よって, $x=0.$

定理
正項級数 $\sum a_n$ について, $$ \lim_{n\to \iy} n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri)=r $$ が存在すると仮定する. $0< r\leq 1$ ならば交代級数: $$ \sum (-1)^{n-1}a_n=a_1-a_2+a_3-a_4+\cd $$ は収束する.

証明
[証明]
$0< r\leq 1$ のとき, 補題より, $\lim_{n\to\iy}a_n=0$ である. また, 十分大きな $N\in\N$ が存在して, $n\geq N$ のとき, $\{a_n\}$ は単調減少である${}^{*1}$. したがって, ライプニッツの定理より, 交代級数 $\sum(-1)^{n-1}a_n$ は収束する.


$(*1)$ $n \geq N$ のとき, $$ n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri) >0 $$ $$ \th a_n > a_{n+1} $$ よって, $\{a_n\}$ は単調減少である.


次の3つの級数について考える: $$ \sum\f{(-1)^{n-1}(2n-1)!}{4^n(n!)^2},\ \ \ \sum\f{(-1)^{n-1}(2n)!}{4^n(n!)^2},\ \ \ \sum\f{(-1)^{n-1}(2n+1)!}{4^n(n!)^2}. $$ $(-1)^{n-1}$ を無視して, $n\le( \f{a_n}{a_{n+1}} -1 \ri)$ の 極限 $r$ を計算すると, 左から順に $r$ の値は $$ \f{3}{2},\ \ \ \f{1}{2},\ \ -\f{1}{2} $$ となる. したがって, ラーベの判定法と前定理より, 左の級数は絶対収束し, 中央の級数は条件収束し, 右の級数は発散する.

その他の収束判定法