Takatani Note

ゾルゲンフライ平面【性質と証明】

$ \def\S{\mathbb{S}} $

この記事では、下記を証明します。

ゾルゲンフライ平面は正則だが正規でない.

上記を証明した後、その重要性について解説します。
では、ゾルゲンフライ平面の定義から始めます。

定義
$\S$ をゾルゲンフライ直線とする.
$\S$ の直積空間 $\S^2:=\S \times \S$ を ゾルゲンフライ平面 (Sorgenfrey plane)という.
$\S^2$ の位相を $\O_{\S^2}$ と表すことにする.

※$\B=\{ (a,b]\times (c,d]$ $\in \S\times \S$ $\mid a,b,c,d\in \S\}$ は $\O_{\S^2}$ の開基である.

※ゾルゲンフライ平面は明らかにハウスドルフ空間なので, 特に $T_1$ 空間である.

ゾルゲンフライ平面の性質

正則である

定理
$\S^2$ は正則である.

[証明]
$A$ を $\S^2$ の閉集合とし, $p:=(p_1,p_2)\in A^c$ とする.
$A^c$ は開集合なので, ある $p$ の開近傍 $V$ が存在して,
$\ \ \ V=(a,p_1]\times (b,p_2]$ $\subset \ol{V}\subset A^c$
を満たす.
このとき, $A \subset \ol{V}^c$ かつ $\ol{V}^c$ は開集合である.
よって, $\S^2$ は正則である.

正規でない

$\S^2$ が正規でないことを示すために, いくつか準備をする.
まず, 集合の濃度について定義を復習しよう.

定義
$X,Y$ を集合とする.
全単射 $f:X\to Y$ が存在するとき, $X$ と $Y$ の濃度は 等しいと言い, $X \sim Y$ と表す.
単射 $f:X\to Y$ が存在するとき, $X \leq Y$ と表す.
$X \leq Y$ だが, 全単射 $f:X\to Y$ が存在しないとき, $X < Y$ と表す.
$C(X)$ を連続関数 $f:X\to \R$ の全体とする.
$F(X,Y)$ を写像 $f:X \to Y$ の全体とする.

次に, 3つの補題とティーツェの拡張定理を用意する.

補題1
$\Delta =\{ (x, -x) \in \S^2 \mid x\in \S\}$ とする.
$\Delta$ に $\S^2$ の相対位相を入れたとき, $\Delta$ は離散空間である.

[証明]
各 $p:=(x,-x)\in \Delta$ に対して, $\{p\}$ が $\Delta$ の開集合であることを示せばよい.
$V=(x-1, x]\times (x-1, -x]$
は $\S^2$ の開集合である.
$\Delta \cap V=\{p\}$ なので, 相対位相の定義より, $\{p\}$ は $\Delta$ の開集合である.
よって, $\Delta$ は離散空間である.

補題2 [内田 問7.8]
$C(\S^2) \sim \R.$

補題3
$\Delta =\{ (x, -x) \in \S^2 \mid x\in \S\}$ とする.
このとき, $\R< C(\Delta).$

[証明]
$\Delta \sim \R$ かつ, 補題1より, $\Delta$ は離散空間であることから, $C(\Delta) \sim F(\R,\R).$
[内田]の問7.7と例7.4より, $\R < F(\R,\R).$
よって, $\R < C(\Delta).$

ティーツェの拡張定理[内田 定理29.5]
$X$ を正規空間とし,
$A$ を $X$ の閉集合とする.
このとき, $A$ 上の任意の実連続関数は $X$ 上の実連続関数に拡張できる.

これで準備が終わったので証明しよう.

定理
$\S^2$ は正規でない.

[証明]
$\S^2$ は正規であると仮定する.
$\Delta$ は $\S^2$ の閉部分空間なので, ティーツェの拡張定理が使える.
この定理より, 連続関数 $f:\Delta \to \R$ に対して, ある連続関数 $g:\S^2\to \R$ が存在して, 任意の $a\in \Delta$ に対して, $f(a)=g(a)$ が成り立つ.

つまり, 単射 $C(\Delta)\to C(\S^2)$ が作れる.
従って, $C(\Delta) \leq C(\S^2).$

ところが, 補題2と補題3より,
$C(\S^2) \sim \R < C(\Delta)$ $\leq C(\S^2)$
となってしまい矛盾する.
よって, $\S^2$ は正規でない.

よって, ゾルゲンフライ平面は正則だが正規でない空間である.
正規ならば正則であるが, 逆は成り立たないことがわかった.

ゾルゲンフライ平面の意義

繰り返すが, ゾルゲンフライ平面は次が成り立つ.

ゾルゲンフライ平面は正則だが正規でない.

上記について補足しよう.
分離公理には下記の関係がある.

距離空間 $\Longrightarrow$ 正規 $\Longrightarrow$ 正則 $\Longrightarrow$ ハウスドルフ $\Longrightarrow$ $T_1$

しかし, 上記の矢印はどれも逆向きは成り立たない.
それぞれの反例は下記のとおり.

上記のとおり, 正規空間は正則だが, その逆は成り立たない.
ゾルゲンフライ平面はその反例になっている.

というわけで, ゾルゲンフライ直線は「分離公理に関する反例」として貴重な位相空間である.