Takatani Note

対称行列の性質【証明】

\[ \newcommand{\tA}{{}^t \hspace{-1.5pt} A \hspace{1pt}} \newcommand{\tP}{{}^t \hspace{-1pt} P \hspace{1pt}} \newcommand{\e}{\bm{e}} \]

この記事では、対称行列について次の性質を証明します。

対称行列と交代行列の関係については交代行列の性質を参照してください。

証明の前に定義を確認しておきます。

定義
$A$ を正方行列とし, ${}^tA$ を $A$ の転置行列とする.
${}^tA=A$ を満たすとき, $A$ を対称行列という.


$\ds A= \m{ 1 & 2 \cr 2 & 4 },\ \ B= \m{ 1 & 0 \cr 0 & 1 }$ は対称行列である.

対称行列の性質【証明】

実対称行列の固有値はすべて実数

定理X
実対称行列の固有値はすべて実数である.

証明
[証明]
$A$ を $n$ 次実対称行列とする.
固有値は複素数まで範囲を広げて考えることにして, $\l$ を $A$ の固有値とし, $\l$ の固有ベクトルを $\x\in \C^n$ とする. すなわち, \[ A\x=\l\x\ \ \ (\x\neq 0) \] そのとき, $\C^n$ の標準的な内積 $(\ ,\ )$ に関して, \[ (A\x,\x)=(\l\x,\x)=\l(\x,\x) \] 他方, 仮定より $\tA=A$ であるから, \[ (A\x,\x)\xeq{*}(\x,\tA\x) =(\x,A\x)=(\x,\l\x)=\ol{\l}(\x,\x) \] ($(*)$ については内積の性質を用いた.)
上式から, 等式 \[ \l(\x,\x)=\ol{\l}(\x,\x) \] が成り立つ. 他方, 内積の性質から, $\x\neq 0$ に対して $(\x,\x)>0$ である. したがって \[ \l=\ol{\l} \] すなわち, $\l$ は実数である.

固有ベクトルの直交性

定理
実対称行列の相異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに直交する.

証明
[証明]
実対称行列 $A$ の相異なる固有値を $\l,\mu$ とし, それぞれの固有ベクトルを $\x,\y$ とする. すなわち, \[\eq{ A\x & =\l\x & \ \ (\x\neq 0) \\ A\y & =\mu\y & \ \ (\y\neq 0) }\] そのとき, \[ (A\x,\y)=(\l\x,\y)=\l(\x,\y) \] 他方, 仮定より $\tA=A$ であるから, \[\eq{ (A\x,\y) & =(\x,\tA\y)=(\x,A\y) \\ & =(\x,\mu\y)=\ol{\mu}(\x,\y) }\] 前定理より, $\ol{\mu}=\mu$ であるから, \[ \l(\x,\y)=\mu(\x,\y) \] となる. したがって \[ (\l-\mu)(\x,\y)=0 \] ところが仮定より $\l \neq \mu$ なので \[ (\x,\y)=0 \] これは固有ベクトル $\x,\y$ が直交することを意味する.

実対称行列は直交行列で対角化される

定理
$n$ 次実正方行列 $A$ について, 次の2つの条件は同値である.
(1) $A$ は実対称行列である.
(2) $A$ は適当な直交行列 $P$ によって対角化できる: \[ P^{-1}AP= \m{ \l_1 & & O \cr & \ddots & \cr O & & \l_n } \]

[証明]
(1) $\Rightarrow$ (2)
$A$ は複素数の範囲では, 重複をこめて $n$ 個の固有値 $\l_1,\cd,\l_n$ を常にもつが, $A$ が実対称行列のとき, 定理Xより, これらは常に実数である. したがって, 直交行列 $P$ が存在して \[ P^{-1}AP= \m{ \l_1 & & * \cr & \ddots & \cr O & & \l_n } \] と三角化できる(行列の三角化).
仮定より, $\tP=P^{-1}$ であり, $\tA=A$ であるから, \[\eq{ {}^t(P^{-1}AP) & ={}^t(\tP AP)=\tP \tA {}^t(\tP) \\ & =\tP \tA P=P^{-1}AP }\] すなわち, 三角行列 $P^{-1}AP$ も対称行列である. つまり \[ \m{ \l_1 & & * \cr & \ddots & \cr O & & \l_n }^{\hspace{-105pt} t} = \m{ \l_1 & & * \cr & \ddots & \cr O & & \l_n } \] であるから, $*$ の部分はすべて $0$ である. したがって \[ P^{-1}AP= \m{ \l_1 & & O \cr & \ddots & \cr O & & \l_n } \] と, すでに対角化されている.

(1) $\Leftarrow$ (2)
$A$ は直交行列 $P$ によって \[ P^{-1}AP= \m{ \l_1 & & O \cr & \ddots & \cr O & & \l_n } \] と対角化できるとする.
対角行列であるから, ${}^t(P^{-1}AP)=P^{-1}AP$ を満たす.
他方 $P^{-1}=\tP$ であるから, \[\eq{ {}^t(P^{-1}AP) & ={}^t(\tP AP)=\tP \tA {}^t(\tP) \\ & =\tP \tA P=P^{-1}\tA P }\] 以上より, 等式 \[ P^{-1}AP = P^{-1}\tA P \] を得る.
この等式に左から $P,$ 右から $P^{-1}$ をかけることによって, $A=\tA$ が得られる.
すなわち, $A$ は実対称行列である.

この定理の一般化として次が成り立つ (正規行列の性質):

$A$ は正規行列 $\iff$ $A$ は適当なユニタリ行列 $U$ によって対角化できる