Takatani Note

開集合と閉集合【問題と証明】

この記事では、開集合と閉集合に関する問題と証明を紹介します。

まず, 開集合と閉集合の定義を確認しておきます。

定義
$(X,d)$ を距離空間とする.
$a\in X,$ とし, $\e$ を正の実数とする. 集合 $$ B(a;\e)=\{ x\in X \mid d(x,a)<\e \} $$ を $a$ を中心, $\e$ を半径とする $X$ の開球体(open ball)という.

$M$ を $X$ の部分集合とする.
点 $a\in X$ に対して, ある正の実数 $\e>0$ をとれば $$ B(a;\e) \sub M $$ が成り立つとき, $a$ を $M$ の内点(interior point)という.

$M$ の任意の点が内点であるとき, $M$ を $X$ の開集合(open set)という.
$M$ が $X$ の閉集合(closed set)であるとは, $M$ の補集合 $M^c$ が $X$ の開集合のときをいう.

以下, $\R^n$ には通常の位相(ユークリッド位相)が入っているとする.

問題

開集合でも閉集合でもない

問題
有理数の集合 $\Q$ は $\R$ の開集合でも閉集合でもないことを示せ.

証明
[証明]
開集合でないこと
原点 $0\in \Q$ が $\Q$ の内点でないことを示そう.
そのためには, どんな $\e>0$ をとっても 開区間 $(-\e,\e)$ (すなわち開球体 $B(0;\e))$ に無理数が属することを示せばよい.

任意の $\e >0$ をとる. アルキメデスの性質より, 十分大きい自然数 $N$ をとれば, $1/N < \e$ が成り立つ.
さらに, $N^2 < p$ を満たす素数 $p$ をとると, $$ 0<\f{1}{\r{p}}< \f{1}{N} < \e $$ より, $1/\r{p}\in B(0;\e)$ である.
従って, $1/\r{p}$ は無理数であるから, 点 $0$ は $\Q$ の内点でない.
よって, $\Q$ は $\R$ の開集合でない.

閉集合でないこと
$\Q$ の補集合(すなわち無理数全体の集合 $\R\sm \Q$ )が $\R$ の開集合でないことを示そう. そのために $\R\sm\Q$ の点 $\r{2}$ が $\R\sm\Q$ の内点でないことを示せばよい.
任意の $\e$ をとる.
有理数の稠密性より, $\r{2}< r <\r{2}+\e$ を満たす $r\in \Q$ が存在する.
したがって, $r\in B(\r{2};\e)$ なので, $$ B(\r{2};\e)\not\sub \R\sm\Q. $$ ゆえに, $\r{2}$ は $\R\sm\Q$ の内点でない.
よって, $\Q$ は $\R$ の閉集合でない.

※アルキメデスの性質と有理数の稠密性については下記参照:
アルキメデスの性質【わかりやすい解説】

問題
$\ds K:=\Big\{\f{1}{n}\ \Big|\ n\in \N \Big\}$ は $\R$ の開集合でも閉集合でもないことを示せ.

証明
[証明]
開集合でないこと
点 $1\in K$ について, どんな $\e>0$ をとっても, $$ \sup K=1 < 1+\f{\e}{2} \in B(1;\e) $$ より, $$ B(1;\e)\not\sub K. $$ 従って, 点 $1\in K$ は $K$ の内点ではないので, $K$ は $\R$ の開集合でない.

閉集合でないこと
$0\in \R\sm K$ は $\R\sm K$ の内点でない.
実際, 点0に対して, $\e>0$ をどれだけ小さくとっても, 十分大きな自然数 $N$ をとると, $$ \f{1}{N} \in B(0;\e) $$ が成り立つ. $1/N\in K$ より, $$ B(0;\e) \not\subset \R\sm K. $$ ゆえに $\R\sm K$ は $\R$ の開集合でない.

※$K$ は $\R$ の閉集合でないが, $K\cup \{0\}$ は $\R$ の閉集合である.

開集合である(でない)こと

問題
開区間 $(a,b)$ は $\R$ の開集合であることを示せ.

証明
[証明]
任意の $x\in (a,b)$ に対して, $$ \e:=\min\{ |a-x|,|b-x| \} $$ とすると, $$ B(x;\e)\subset (a,b). $$ 従って, $x$ は $(a,b)$ の内点である.
よって, $(a,b)$ は $\R$ の開集合である.

問題
開区間 $(0,\infty)$ は $\R$ の開集合であることを示せ.
※$(0,\infty)$ は正の実数全体の集合.

証明
[証明]
任意の $a\in (0,\infty)$ に対して, $\e=a$ とすれば, $$ B(a;\e)\subset (0,\infty). $$ 従って, $a$ は $(0,\infty)$ の内点である.
よって, $(0,\infty)$ は $\R$ の開集合である.

補足
上の解答で, $\e=a$ としたが, $\e=a/2$ や $\e=a/3$ としてもよい.
$\e=a$ だと, 開球体 $B(a;\e)$ がギリギリ $(0,\infty)$ に含まれる.
ギリギリは嫌だと思う人は $\e=a/2$ どとしても問題ない.

問題
半開区間 $[0,1)$ は $\R$ の開集合でないことを示せ.

証明
[証明]
点 $0\in [0,1)$ に対して, どんな $\e>0$ をとっても, 開球体 $B(0;\e)$ には負の数を含むので,
$$ \B(0;\e)\not\subset [0,1). $$ 従って, 点0は $[0,1)$ の内点でない. よって, $[0,1)$ は $\R$ の開集合でない.

問題
次の半径 $r$ の円盤 $D$ は $\R^2$ の開集合であることを示せ. $$ D=\{(x,y)\in \R^2\mid x^2+y^2 < r^2 \} $$

証明
[証明]
任意の $P:=(x,y)\in D$ をとる. $$ \e=r-\r{x^2+y^2} $$ とすると, $$ B(P;\e)\subset D. $$ 従って, 点 $P$ は $D$ の内点である.
よって, $D$ は $\R^2$ の開集合である.

閉集合であること

問題
任意の $a\in \R$ に対して, 1点集合 $\{a\}$ は $\R$ の閉集合であることを示せ.

証明
[証明]
$\{a\}$ の補集合 $\R\sm\{a\}$ が $\R$ の開集合であることを示せばよい. 任意の $x\in \R\sm\{a\}$ をとる.
$\e=|x-a|/2$ とすれば, $$ B(x;\e)\subset \R\sm\{a\}. $$ 従って, 点 $x$ は $\R\sm\{a\}$ の内点である. ゆえに, $\R\sm\{a\}$ は $\R$ の開集合である. よって, $\{a\}$ は $\R$ の閉集合である.

問題
整数の集合 $\Z$ は $\R$ の閉集合であることを示せ.

証明
[証明]
$\Z$ の補集合 $\R\sm\Z$ が $\R$ の開集合であることを示せばよい. 任意の $x\in \R\sm\Z$ をとる.
すると, $n< x< n+1$ を満たす $n\in \Z$ が存在する. ここで, $$ \e=\min\{x-n, (n+1)-x\} $$ とすれば, $$ B(x;\e)\subset \R\sm\Z.$$ 従って, $x$ は $\R\sm\Z$ の内点である.
ゆえに $\Z$ の補集合は $\R$ の開集合である.
よって, $\Z$ は $\R$ の閉集合である.

問題
次の半径 $r$ の円盤 $\ol{D}$ は $\R^2$ の閉集合であることを示せ. $$ \ol{D}=\{(x,y)\in \R^2\mid x^2+y^2 \leq r^2 \} $$

証明
[証明]
任意の $Q:=(x,y)\in \R^2\sm \ol{D}$ をとる. $$ \e=\r{x^2+y^2}-r >0 $$ とすると, $$ B(Q;\e)\subset \ol{D}. $$ 従って, 点 $Q$ は $\R^2\sm\ol{D}$ の内点である.
よって, $\ol{D}$ は $\R^2$ の閉集合である.

無限個の開集合の共通部分

問題
無限個の開集合の共通部分は開集合とは限らないことを示せ.

証明
[証明]
$\R$ の開区間 $$ I_n=(-1/n,\ 1/n) $$ について, 各 $n\in \N$ に対して $I_n$ は開集合である.
しかし, それらの共通部分は $$ \bigcap_{n\in \N}I_n=\{0\} $$ $\R$ の開集合でない. $\{0\}$ は $\R$ の開集合でないからである.

※無限個の開集合の「和集合」は開集合である.

無限個の閉集合の和集合

問題
無限個の閉集合の和集合は閉集合とは限らないことを示せ.

証明
[証明]
$\R$ において, 閉区間の族 $$ I_n:=\left[\f{1}{n},2\right] \ \ (n\in \N)$$ について, それらの和集合 $$ \bigcup_{n\in \N}I_n=(0,2] $$ は $\R$ の閉集合でない.

※無限個の閉集合の「共通部分」は閉集合である.

3元集合の29個の位相

問題
集合 $\{1,2,3\}$ には29個の位相が入ることを示せ.
さらに, 同相(位相同型)である位相空間を同じものとみなすとき, 29個の位相は9種類に分けられることを示せ.

証明
[証明]
$\ds\begin{array}{ll} (1) & \O_1 =\big\{\emp , X\big\}, \\ & \\ (2) & \O_2 =\big\{\emp , \{1\}, X\big\}, \\ & \O_3 =\big\{\emp , \{2\}, X\big\}, \\ & \O_4 =\big\{\emp , \{3\}, X\big\}, \\ & \\ (3) & \O_5=\big\{\emp , \{1, 2 \}, X\big\}, \\ & \O_6=\big\{\emp , \{1, 3 \}, X\big\}, \\ & \O_7=\big\{\emp , \{2, 3 \}, X\big\}, \\ & \\ (4) & \O_8=\big\{\emp , \{1\}, \{2, 3\}, X\big\}, \\ & \O_9=\big\{\emp , \{2\}, \{2, 3\}, X\big\}, \\ & \O_{10}=\big\{\emp , \{3\}, \{1, 2\}, X\big\}, \\ & \\ (5) & \O_{11}=\big\{\emp , \{1, 2\}, \{1\}, X\big\}, \\ & \O_{12}=\big\{\emp , \{1, 2\}, \{2\}, X\big\}, \\ & \O_{13}=\big\{\emp , \{1, 3\}, \{1\}, X\big\}, \\ & \O_{14}=\big\{\emp , \{1, 3\}, \{3\}, X\big\}, \\ & \O_{15}=\big\{\emp , \{2, 3\}, \{2\}, X\big\}, \\ & \O_{16}=\big\{\emp , \{2, 3\}, \{3\}, X\big\}, \\ & \\ (6) & \O_{17}=\big\{\emp , \{1, 2\}, \{1\}, \{2\}, X\big\}, \\ & \O_{18}=\big\{\emp , \{1, 3\}, \{1\}, \{3\}, X\big\}, \\ & \O_{19}=\big\{\emp , \{2, 3\}, \{2\}, \{3\}, X\big\}, \\ & \\ (7) & \O_{20}=\big\{\emp , \{1, 2\}, \{1, 3\}, \{1\}, X\big\}, \\ & \O_{21}=\big\{\emp , \{1, 2\}, \{2, 3\}, \{2\}, X\big\}, \\ & \O_{22}=\big\{\emp , \{1, 3\}, \{2, 3\}, \{3\}, X\big\}, \\ & \\ (8) & \O_{23}=\big\{\emp , \{1,2\}, \{1,3\}, \{1\}, \{2\},X\big\} \\ & \O_{24}=\big\{\emp , \{1,2\}, \{1,3\}, \{1\}, \{3\},X\big\} \\ & \O_{25}=\big\{\emp , \{1,2\}, \{2,3\}, \{1\}, \{2\},X\big\} \\ & \O_{26}=\big\{\emp , \{1,2\}, \{2,3\}, \{2\}, \{3\},X\big\} \\ & \O_{27}=\big\{\emp , \{1,3\}, \{2,3\}, \{1\}, \{3\},X\big\} \\ & \O_{28}=\big\{\emp , \{1,3\}, \{2,3\}, \{2\}, \{3\},X\big\} \\ & \\ (9) & \O_{29}=\{\emp,\{1,2\}, \{1,3\}, \{2,3\}, \{1\}, \{2\}, \{3\},X\big\}. \end{array}$