Takatani Note

アルキメデスの性質【わかりやすい解説】

この記事では、アルキメデスの性質「どんな実数 $x$ をとっても, $x < n$ を満たす自然数 $n$ が存在する.」 について証明します。

その後, 応用として「有理数の稠密性」を証明します。

アルキメデスの性質の証明

アルキメデスの性質を証明する前に, 「上に有界」という言葉を定義し, 実数の連続性の公理を述べる.

定義
$A$ を $\R$ の部分集合とする.
ある実数 $K$ があって, 任意の $x\in A$ に対して $x\leq K$ を満たすとき, $A$ は上に有界であるといい,

たとえば, $A=[0,3)$ とすると, $A$ は上に有界である.

次の公理は実数の連続性といわれるもので, 解析学の出発点となる重要な公理である.

公理
上に有界な集合は必ず上限を持つ.

上限の詳しいことは上限と下限(supとinf)【例題】を参照してください.

この公理からアルキメデスの性質が導かれる.

定理 (アルキメデスの性質)
どんな実数 $x$ をとっても, $x < n$ を満たす自然数 $n$ が存在する.
(すなわち, $\N$ は上に有界でない.)

[証明]
背理法で示す. もし $\N$ が上に有界であったと仮定すると, 公理より, $\N$ の上限 $\a:=\sup \N$ が存在する.
上限の定義より, $1\in \N$ に対して, ある $m\in \N$ が存在して, $$ \a-1 < m < \a. \ \ \ \th \a < m+1. $$ ところが, $m+1\in \N$ より $m+1 \leq \a$ であるから, これは矛盾である.

有理数の稠密性

アルキメデスの性質より, 次を得る.

定理 (有理数の稠密性)
任意の相異なる $\a,\b\in \R$ に対して, $\a < r< \b$ を満たす $r\in \Q$ が存在する.

[証明]
$\a <\b$ とする.
アルキメデスの原理より, $\f{1}{\b-\a}$ に対して, それを超える $n\in \N$ が存在する: $$ \f{1}{\b-\a} < n.\ \ \ \th \a+\f{1}{n} < \b. $$
再びアルキメデスの原理より, $n\a < m$ かつ $-n\a < m$ を満たす $m\in \N$ がある.
$-m < n\a < m$ より $-m, -m+1,\cdots,m-1,m$ のうち $n\a$ を初めて超えるものを $k$ とすると, $k-1 \leq n\a < k.$ これより, $$ \a < \f{k}{n},\ \ \ k \leq n\a +1. $$ $$ \th \a < \f{k}{n} \leq \f{n\a +1}{n} = \a+\f{1}{n} < \b. $$ よって, $r=\f{k}{n}\in \Q$ とおけば, $$ \a < r < \b. $$