Takatani Note

開写像と閉写像【例と反例】

この記事では, 開写像と閉写像について例を紹介します。

はじめに定義を確認しておきます。

定義
$X,Y$ を位相空間とし, $f:X\to Y$ を写像とする.
$X$ の任意の開集合 $O$ に対して, $f(O)$ が $Y$ の開集合になるとき, 写像 $f$ は開写像 (open map)という.

$X$ の任意の閉集合 $C$ に対して, $f(C)$ が $Y$ の閉集合になるとき, 写像 $f$ は閉写像 (closed map)という.

性質

$f$ が全単射ならば「$f$ は開写像$\iff$$f$ は閉写像」

定理
$X,Y$ を位相空間とし, $f:X\to Y$ を写像とする.
$f$ が全単射のとき, 次は同値である.
(1) $f$ は開写像である.
(2) $f$ は閉写像である.

証明
[証明]
$(1)\Rightarrow(2)$
$f$ は全単射な開写像とする.
$U$ を $X$ の閉集合とすると, その補集合 $U^c$ は $X$ の開集合なので, $f(U^c)$ は $Y$ の開集合である.
$f$ は全単射なので, $f(U^c)=f(U)^c$ が成り立つ.
すると, $f(U)^c$ も開集合であり, その補集合 $\big(f(U)^c\big)^c=f(U)$ は閉集合である.
よって, $f$ は閉写像である.

$(1)\Leftarrow(2)$
$f$ は全単射な閉写像とする.
$O$ を $X$ の開集合とすると, その補集合 $O^c$ は $X$ の閉集合なので, $f(O^c)$ は $Y$ の閉集合である.
$f$ は全単射なので, $f(O^c)=f(O)^c$ が成り立つ.
すると, $f(O)^c$ も閉集合であり, その補集合 $\big(f(O)^c\big)^c=f(O)$ は開集合である.
よって, $f$ は開写像である.

射影は開写像である

定理
$X,Y$ を位相空間とする.
射影 $p:X\times Y,\ \ (x,y)\ma x$ は開写像である.

証明
[証明]
$M$ を $X\times Y$ の開集合とする.
$p(M)$ が $X$ の開集合であることを示そう.
そのために, $p(M)$ の任意の点 $m$ が $p(M)$ の内点であることを示せばよい.

$m\in p(M)$ より, $p((x,y))=m$ を満たす $(x,y)\in X\times Y$ が存在する.
直積位相の定義より, \[ (x,y)\in U\times V \subset M \] を満たす $X$ の開集合 $U$ と $Y$ の開集合 $V$ が存在する.
\[ m=p((x,y))\in p(U\times V)=U\subset p(M) \] より, $m\in U\subset p(M)$ なので, $m$ は $p(M)$ の内点である.
よって, $p(M)$ は $X$ の開集合である.

開写像だが閉写像でない例


$p:\R\times \R\to \R,$
$\ \ \ (x,y)\mapsto x$
とすると, $p$ は射影であるので開写像である.
しかし, $p$ は閉写像でない.

証明
[証明]
$\R^2$ 内の双曲線: \[ S=\{(x,y)\in \R^2\mid xy=1\} \] は $\R^2$ の閉集合だが, $p(A)=\R\sm\{0\}$ は $\R$ の閉集合でない.

閉写像だが開写像でない例


$\R$ には通常の位相を入れる.
このとき, 定値関数 $f:\R\to\R, x\ma 0$ は閉写像だが開写像でない.

証明
[証明]
閉写像であること
$C$ を $\R$ の任意の(空でない)閉集合とする.
このとき, $f(C)=\{0\}$ は $\R$ の閉集合である.
また, 空集合 $\emp$ は $\R$ の閉集合であり, $f(\emp)$ も閉集合である.
したがって, $f$ は閉写像である.

開写像でないこと
$O$ を開区間 $(0,1)$ とすると, $O$ は $\R$ の開集合である.
しかし, $f(O)=\{0\}$ は $\R$ の開集合でない.
したがって, $f$ は開写像でない.

連続だが開写像でない例


$f(x)=x^2$ で定まる関数 $f:\R\to \R$ は連続だが開写像でない.

証明
[証明]
$\e-\delta$ 論法により, $f$ は連続であることが示せる.
開区間 $(-1,1)$ は $\R$ の開集合だが, その像 $f((-1,1))=[0,1)$ は半開区間であり, これは開集合でない.
したがって, $f$ は開写像でない.

開写像かつ閉写像であるが連続でない


密着空間 $\R$ から離散空間 $\R$ への恒等写像 $id$ は, 開写像かつ閉写像であるが連続でない.

証明
[証明]
密着空間 $\R$ の任意の部分集合 $S$ に対して, $id(S)$ は離散空間 $\R$ の開集合かつ閉集合である.
したがって, $id$ は開集合かつ閉写像である.

他方, 離散空間 $\R$ 内の1点集合 $\{0\}$ は開集合であるが, その逆像 $id^{-1}(\{0\})$ は密着空間では開集合でない.
したがって, $id$ は連続写像でない.