Takatani Note

フーリエ変換の性質【証明と例題】

$$ \def\F{\mathcal{F}} \def\Int{\int_{-\infty}^\infty} $$

この記事では、フーリエ変換の性質を証明し、例題を扱います。

定義と例

定義
可積分な関数 $f:\R\to \C$ に対して, $$ F(\o)=\Int f(x)e^{-i\o x}dx ,\ \ (\o\in\R)$$ と定義する. この関数 $F:\R\to \C$ を $f(x)$ のフーリエ変換(Fourier transform)という. $F(\o)$ を $\F[f(x)]$ で表す.

※関数 $f:\R\to\C$ が可積分(integrable)であるとは, $$ \ds\Int |f(x)|dx < \iy $$ を満たすルベーグ可測関数のことである.

※広義積分 $F(\o)$ は任意の $\o\in\R$ で収束する. 実際, $|e^{-i\o x}|=1$ より, $$ |F(\o)|\leq \Int |f(x)e^{-i\o x}|dx =\Int |f(x)|dx< \iy. $$ したがって, $F(\o)$ は絶対収束するから収束する. ( 広義積分の収束については広義積分の例題【収束と計算】を参照してください.)

定義
関数 $f(x)$ のフーリエ変換 $F(\o)$ に対して, $$ \f{1}{2\pi}\Int F(\o)e^{i\o x}d\o $$ を $F(\o)$ の逆フーリエ変換といい. $\F^{-1}[F(\o)]$ で表す.

[注意]
$\ds F(\o)=\f{1}{\r{2\pi}} \Int f(x)e^{-i\o x}dx$ を $f(x)$ のフーリエ変換と定める場合もある. その場合, 逆フーリエ変換は $\ds \F^{-1}[F(\o)]=\f{1}{\r{2\pi}} \Int F(\o)e^{i\o x}d\o$ となる.

フーリエ変換と逆フーリエ変換について, 次のフーリエ積分定理が成り立つことが知られている.

定理
関数 $f(x)$ は $\R$ 上の可積分かつ区分的に滑らかな関数とする. このとき, $f(x)$ のフーリエ変換の逆変換について $$ \F^{-1}[\F[f(x)]] =\f{1}{2}\Big( f(x-0)+f(x+0) \Big) \tag{3} $$ が成り立つ. $f(x)$ が連続ならば, 上式の右辺は $f(x)$ に等しい.

(3)は, フーリエ級数と同じ記号 $\sim$ を用いて, $$ f(x)\sim \f{1}{2\pi}\Int F(\o)e^{i\o x}d\o $$ と表す. これを反転公式という.


$$ f(x)=\case{ 1 & (|x|\leq 1) \cr 0 & (|x|>1) } $$ とすると, $f(x)$ のフーリエ変換 $F(\o)$ は $$ F(\o)=\case{ \f{2\sin\o}{\o} & (\o\neq 0) \cr 2 & (\o =0). } $$

証明
[証明]
フーリエ変換の定義によって, $$ F(\o)=\Int f(x)e^{-i\o x}dx =\int_{-1}^1 e^{-i\o x}dx $$ である. $\o=0$ のとき, $$ F(0)=\int_{-1}^1 dx=2 $$ となる. $\o\neq 0$ のときは, $$ F(\o)=\Big[ \f{e^{-i\o x}}{-i\o} \Big]_{-1}^1 =\f{e^{-i\o}-e^{i\o}}{-i\o} =\f{-2i\sin\o}{-i\o}=\f{2\sin\o}{\o} $$ となる. したがって, $\o=0$ のときも含めて, $f(x)$ のフーリエ変換は, 次のようになる. $$ F(\o)=\f{2\sin\o}{\o}. $$

性質

定理
フーリエ変換は線形性をもつ. すなわち, $$ \F[af(x)+bg(x)]=a\F[f(x)]+b\F[g(x)] $$

証明
[証明]
$$\eq{ \F[af(x)+bg(x)] & =\Int (af(x)+bg(x))e^{-i\o x}dx \cr & = a\Int f(x)e^{-i\o x}dx +b\Int g(x)e^{-i\o x}dx \cr & =a\F[f(x)]+b\F[g(x)]. }$$

さらに, 次の性質が成り立つ. フーリエ変換の理論を応用するためには, これらの性質をよく理解しておく必要がある.

定理
$\F[f(x)]=F(\o)$ とするとき, 次の性質が成り立つ. ただし, $c$ は定数, $a$ は0でない定数である.
$(1)\ \F[f(x-c)]=e^{-ic\o}F(\o)$
$(2)\ \F[e^{icx}f(x)]=F(\o-c)$
$(3)\ \F[f(ax)]=\f{1}{|a|}F(\f{\o}{a})$

証明
[証明]
(1) $x-c=t$ とおくと, $dx=dt$ となるから, 次のように証明することができる. $$\eq{ \F[f(x-c)] & =\Int f(x-c)e^{-i\o x}dx \\ & =\Int f(t)e^{-i\o(c+t)}dt \\ & =e^{-ic\o}\Int f(t)e^{-i\o t}dt \\ & =e^{-ic\o}F(\o) }$$ (2) フーリエ変換の定義から直接, 次のようにして証明できる. $$\eq{ \F[e^{ic\o}f(x)] & =\Int e^{icx}f(x)e^{-i\o x}dx \\ & =\Int f(x)e^{-i(\o-c)x}dx \\ & =F(\o-c) }$$ (3) $a>0, a< 0$ の場合に分けて証明する. どちらも $t=ax$ とおく. $a>0$ のとき, $$\eq{ \F[f(ax)] & =\Int f(ax)e^{-i\o x}dx \\ &=\Int f(t)e^{-i\o\tfrac{t}{a}} \cdot\f{1}{a}dt \\ &=\f{1}{a}F(\f{\o}{a}) }$$ $a<0$ のとき, $$ \F[f(ax)] =\int_\iy^{-\iy} f(t)e^{-i\o\tfrac{t}{a}} \cdot\f{1}{a}dt=-\f{1}{a}F(\f{\o}{a}) $$

定理
$$ \F[f^{(n)}(x)]=(i\o)^n\F[f(x)] $$ が成り立つ. とくに $$ \F[f'(x)]=i\o\F[f(x)],\ \ \ \F[f''(x)]=-\o^2\F[f(x)] $$

証明
[証明]
部分積分法を用いれば, $$\eq{ \F[f'(x)] & =\Int f'(x)e^{-i\o x}dx \\ &=\le[ f(x)e^{-i\o x} \ri]_{-\iy}^\iy +i\o\Int f(x)e^{-i\o x}dx \\ &=\le[ f(x)e^{-i\o x} \ri]_{-\iy}^\iy +i\o\F[f(x)] }$$ となる. ここで, $\ds\Int|f(x)|dx < \iy$ より $\lim_{x\to\pm\iy}f(x)=0$ であることと, $|e^{-i\o x}|=1$ より, $$ \le[ f(x)e^{-i\o x} \ri]_{-\iy}^\iy=0 $$ なので, $$ \F[f'(x)]=i\o F(\o). $$ この議論を繰り返せば, $$ \F[f^{(n)}(x)]=(i\o)^n\F[f(x)] $$ であることもわかる.

この定理は, フーリエ変換によって, 関数の微分演算が波数 $\o$ (正確には $i\o$)をかけるという代数演算に置き換えられることを意味している. この性質により, フーリエ変換は微分方程式の解の性質を調べるときに大変役立つ. 例えば, 拡散方程式の基本解を求めるときに利用される.

定理
$$ \F\le[\ds\int_{-\iy}^x f(t)dt\ri] =\f{1}{i\o}\F[f(x)] $$

証明
[証明]
$g(x)=\int_{-\iy}^xf(t)dt$ とおくと, $g'(x)=f(x)$ である. ここで, 前定理を $g(x)$ に適用すれば, $$ \F[f(x)]=\F[g'(x)]=i\o\F[g(x)] =i\o\F\le[ \int_{-\iy}^xf(t)dt \ri] $$ となる. したがって, $\F[f(x)]$ を $F(\o)$ と書き直せば, $$ \F\le[\int_{-\iy}^xf(t)dt\ri]=\f{1}{i\o}F(\o) $$ が得られる.

たたみ込み

定義
$$ (f*g)(x)=\Int f(x-y)g(y)dy $$ とする. この $(f*g)(x)$ を $f$ と $g$ のたたみ込みという.

定理
$$ \F[(f*g)(x)]=\F[f(x)]\F[g(x)] $$

証明
[証明]
$$\eq{ \F[(f*g)(x)] & =\Int \le(\Int f(x-y)g(y)dy\ri) e^{-i\o x}dx \\ & =\Int \Int f(x-y)g(y)e^{-i\o x}dxdy }$$ ここで, 変数変換 $x-y=u, u=v$ を行うと, $x=u+v,\ y=v$ より $$ \le| \det \m{ x_u & x_v \cr y_u & y_v } \ri| =1 $$ であるから, $$\eq{ \F[(f*g)(x)] & =\Int \Int f(u)g(v) e^{-i\o(u+v)}dudv \\ & =\le( \Int f(u)e^{-i\o u}du \ri) \le( \Int g(v)e^{-i\o v}dv \ri) \\ & =\F[f(x)]\F[g(x)] }$$

例題
$a$ を正の定数とし, $$ f(x)=\case{ e^{-ax} & (x\leq 0) \cr 0 & (x < 0) } $$ とする.
(1) $f(x)$ のフーリエ変換を求めよ.
(2) フーリエ積分定理を用いて次の等式を示せ. $$ \Int \f{1}{a^2+\o^2}d\o=\f{\pi}{a} $$

解答
[解答]
(1) $$\eq{ F(\o) & =\int_0^\iy e^{-(a+i\o)x}dx \\ & =\le[ -\f{1}{a+i\o}e^{-(a+i\o)x} \ri]_0^\iy \\ & =\f{1}{a+i\o} \\ & =\f{a-i\o}{a^2+\o^2} }$$ (2) フーリエ積分定理から $$ \f{1}{2\pi}\Int \f{(a-i\o)e^{i\o x}}{a^2+\o^2}d\o =\case{ e^{-ax} & (x > 0) \cr \f{1}{2} & (x=0) \cr 0 & (x < 0) } $$ が成り立つ. $x=0$ として実部を比べると, $$ \f{1}{2\pi}\Int\f{a}{a^2+\o^2}d\o =\f{1}{2} $$ となって, 求める式を得る.