Takatani Note

広義積分の例題【収束と計算】

$ \def\dint{\displaystyle\int} \def\del{\delta} $

この記事では, 広義積分について次の2種類の問題を扱います。

広義積分の収束問題

収束を示すための定理

次の判定法は広義積分の収束を示すときに役立つ.

比較判定法
開区間 $(a,b)$ 上で $0\leq f\leq g$ とする.
このとき, $\dint_a^b g(x)dx$ が収束するならば, $\dint_a^b f(x)dx$ も収束する.
(※$b=\iy$ のときも成り立つ.)

絶対収束判定法
$\dint_a^b |f(x)|dx$ が収束するならば, $\dint_a^b f(x)dx$ は収束する.
(※$b=\iy$ のときも成り立つ.)

ガンマ関数の収束

定理 (ガンマ関数)
次の広義積分は収束する.
$\dint_0^\iy e^{-x}x^{s-1}dx\ \ (s>0)$

証明
[証明]
$f(x)=e^{-x}x^{s-1}\ \ (s>0)$ とおく.
$$ \int_0^\iy f(x)dx =\int_0^1 f(x)dx+\int_1^\iy f(x)dx $$ に分解できるので, 右辺の2項がそれぞれ収束することを示そう.

●$\dint_0^1 f(x)dx$ について:
$0< x \leq 1$ のとき, $$ |f(x)| =e^{-x}x^{s-1}\leq x^{s-1}=\f{1}{x^{1-s}} $$ であり, $\dint_0^1 \f{1}{x^{1-s}}dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_0^1 |f(x)|dx$ は収束する.
$|f(x)|=f(x)$ より, $\dint_0^1 f(x)dx$ は収束する.

●$\dint_1^\iy f(x)dx$ について:
$$ x^2 |f(x)| \to 0\ \ \ \ (x\to \iy) $$ より, 実数 $M>0$ を十分大きくとると, 各 $x \geq M$ に対して $x^2 |f(x)|\leq 1$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{1}{x^2}\ \ (x \geq M).$$ 上式と, $\dint_M^\iy \f{1}{x^2}\ dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_M^\iy |f(x)|dx$ は収束する.
$|f(x)|=f(x)$ より, $\dint_M^\iy f(x)dx$ は収束する.

以上から, $\dint_0^\iy f(x) \ dx$ は収束する.

ベータ関数の収束

定理 (ベータ関数)
次の広義積分が収束する.
$\dint_0^1 x^{p-1}(1-x)^{q-1}dx\ \ (p,q >0)$

証明
[証明]
$f(x)=x^{p-1}(1-x)^{q-1}$ とおく. $a=1/2$ とおくと,
$$ \int_0^1 f(x)dx =\int_0^a f(x)dx+\int_a^1 f(x)dx $$ に分解できるので, 右辺の2項がそれぞれ収束することを示そう.

●$\dint_0^a f(x)dx$ について:
$$ x^{1-p}\ |f(x)| =(1-x)^{q-1}\to 1\ \ \ \ (x\to 0) $$ より, 十分小さい $\del >0$ をとると, $0< x\leq \del$ のとき, $x^{1-p}\ |f(x)|\leq 2$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{2}{x^{1-p}}\ \ (0< x\leq \del).$$ 上式と, $\dint_0^\del \f{2}{x^{1-p}}dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_0^\del |f(x)|dx$ は収束する.
ゆえに, 絶対収束判定法より, $\dint_0^\del f(x)dx$ は収束する.

●$\dint_a^1 f(x)dx$ について:
$$ (1-x)^{1-q}\ |f(x)| =x^{p-1}\to 1\ \ \ \ (x\to 1) $$ より, 十分小さい $\del >0$ をとると, $1-\del < x\leq 1$ のとき, $(1-x)^{1-q}\ |f(x)|\leq 2$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{2}{(1-x)^{1-q}} \ \ (1-\del < x\leq 1).$$ 上式と, $\dint_{1-\del}^1 \f{2}{(1-x)^{1-q}}dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_{1-\del}^1 |f(x)|dx$ は収束する.
ゆえに, 絶対収束判定法より, $\dint_{1-\del}^1 f(x)dx$ は収束する.

以上から, $\dint_0^1 f(x) \ dx$ は収束する.

例題

例題
次の広義積分が収束することを示せ.
$\dint_1^\iy \f{\sin x}{x^2}$

解答
[解答]
$\dint_1^\iy \f{1}{x^2}$ は収束し, $$ 0\leq \f{|\sin x|}{x^2} \leq \f{1}{x^2} $$ が成り立つので, 比較判定法から, $\dint_1^\iy \f{|\sin x|}{x^2}$ は収束する.
よって, 絶対収束判定法より, $\dint_1^\iy \f{\sin x}{x^2}$ は収束する.

例題
次の広義積分が収束することを示せ.
$\dint_0^\iy \f{\log x}{1+x^2} \ dx$

解答
[解答]
$f(x)=\f{\log x}{1+x^2}$ とおく.
$$ \int_0^\iy f(x)dx =\int_0^1 f(x)dx+\int_1^\iy f(x)dx $$ に分解できるので, 右辺の2項がそれぞれ収束することを示そう.

●$\dint_0^1 f(x)dx$ について:
ロピタルの定理を使うと, $$ \r{x}\ |f(x)| =\f{1}{1+x^2}\f{|\log x|}{1/\r{x}} \to 1\c 0 = 0\ \ \ \ (x\to 0) $$ より, 実数 $\del >0$ を十分小さくとると, $0< x\leq \del$ のとき, $\r{x}\ |f(x)|\leq 1$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{1}{\r{x}}\ \ (0< x\leq \del).$$ 上式と, $\dint_0^\del \f{1}{\r{x}}dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_0^\del |f(x)|dx$ は収束する.
ゆえに, 絶対収束判定法より, $\dint_0^\del f(x)dx$ は収束する.

●$\dint_1^\iy f(x)dx$ について:
$$ x^{3/2}\ |f(x)| =\f{x^2}{1+x^2}\f{|\log x|}{\r{x}} \to 1\c 0=0\ \ \ \ (x\to \iy) $$ より, 実数 $M>0$ を十分大きくとると, 各 $x \geq M$ に対して $x^{3/2}\ |f(x)|\leq 1$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{1}{x^{3/2}}\ \ (x \geq M).$$ 上式と, $\dint_M^\iy \f{1}{x^{3/2}}\ dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_M^\iy |f(x)|dx$ は収束する.
ゆえに, 絶対収束判定法より, $\dint_M^\iy f(x)dx$ は収束する.

以上から, $\dint_0^\iy f(x) \ dx$ は収束する.

例題
次の広義積分が収束することを確かめよ.
(1) $\dint_0^{\pi/2} \log (\sin x)\ dx$

解答
[解答]
$f(x)=\log (\sin x)$ とおく. $f(\pi/2)=0$ より, 点 $0$ の近くで収束するか調べるだけでよい.
ロピタルの定理を用いると, $$\eq{ \lim_{x\to 0}\r{x}\ |f(x)| &=\lim_{x\to 0}\f{\log (\sin x)}{1/\r{x}}\\ &=\lim_{x\to 0}\f{\cos x/\sin x}{-1/(2x^{3/2})}\\ &=\lim_{x\to 0}\f{x}{\sin x}(-2\r{x}\cos x)\\ &=0\cdot (-2\cdot 0 \cdot 1)=0. }$$ したがって, 十分小さい $\del >0$ をとると, $0< x \leq \del$ のとき $\r{x}\ |f(x)|\leq 1$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{1}{\r{x}}\ \ (0< x\leq \del).$$ 上式と, $\dint_0^\del \f{1}{\r{x}}dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_0^\del |f(x)|dx$ は収束する.
ゆえに, 絶対収束判定法より, $\dint_0^\del f(x)dx$ は収束する.
よって, $\dint_0^{\pi/2} f(x) \ dx$ は収束する.

例題
次の広義積分が収束することを確かめよ.
(1) $\dint_0^\pi \f{dx}{\r{\sin x}} \ dx$

解答
[解答]
$f(x)=\f{1}{\r{\sin x}}$ とおく. $f(\pi-x)=f(x)$ より, $f(x)$ は $x=\tf{\pi}{2}$ に関して対称な関数である. したがって, 広義積分の収束については点 $0$ の近くだけ調べればよい. $$ \r{x}\ |f(x)| =\r{\f{x}{\sin x}} \to 1\ \ \ \ (x\to +0) $$ より, 十分小さい $\del >0$ をとると, $0< x \leq \del$ のとき, $\r{x}\ |f(x)|\leq 2$ が成り立つ. したがって, $$ |f(x)|\leq \f{2}{\r{x}}\ \ (0< x\leq \del).$$ 上式と, $\dint_0^\del \f{2}{\r{x}}dx$ は収束することから, 比較判定法より, $\dint_0^\del |f(x)|dx$ は収束する.
ゆえに, 絶対収束判定法より, $\dint_0^\del f(x)dx$ は収束する.
よって, $\dint_0^{\pi} f(x) \ dx$ は収束する.

広義積分の計算問題

例題
次の広義積分を求めよ.
$(1)\ \dint_1^\iy \f{1}{x^s}dx\ \ (s>1)\ \ \ $ $(2)\ \dint_0^1 \f{1}{x^s}dx\ \ (s < 1)$

解答
[解答]
(1) $$ \int_1^\iy\f{1}{x^s}dx =\le[ \f{x^{1-s}}{1-s} \ri]_1^\iy=\f{1}{s-1}. $$
(2) $$ \int_0^1 \f{1}{x^s}dx =\le[ \f{x^{1-s}}{1-s} \ri]_0^1=\f{1}{1-s}. $$

例題
次の広義積分を求めよ.
(1) $\dint_0^1 \log x\ dx$

解答
[解答]
$$ \dint_s^1 \log x\ dx =\Big[x\log x -x\Big]_s^1 =s\log s -s -1 \to -1 \ \ \ (s\to 0+0) $$ $$ \th \dint_0^1 \log x\ dx = -1. $$

例題
次の広義積分を求めよ.
(1) $\dint_0^1 \f{1}{\r{1-x^2}} \ dx$

解答
[解答]
$$ \dint_0^t \f{1}{\r{1-x^2}} dx =\Big[\mathrm{arcsin}\ x\Big]_0^t =\mathrm{arcsin}\ t \to \f{\pi}{2} \ \ \ \ (t\to 1-0) $$ $$ \th \dint_0^1 \f{1}{\r{1-x^2}}\ dx = \f{\pi}{2}. $$

例題
次の広義積分を求めよ.
(1) $\dint_0^\iy \f{1}{x^2+1} \ dx$

解答
[解答]
$$ \dint_0^t \f{1}{x^2+1} dx =\Big[\mathrm{arctan}\ x\Big]_0^t =\mathrm{arctan}\ t \to \f{\pi}{2} \ \ \ (t\to +\iy) $$ $$\th\dint_0^\iy \f{1}{x^2+1}\ dx = \f{\pi}{2}. $$