Takatani Note

正則局所環

定義

定義
$(A,\m)$ をネーター局所環とする.
$\ \ \ \dim A=\rank_{k}\m/\m^2$
が成り立つとき, $A$ は正則局所環 (regular local ring)という.

※$\rank_{k}\m/\m^2$ は体 $k$ 上の自由加群としての階数, すなわちベクトル空間としての次元を表す.

補足
・一般のネーター局所環では,
$\ \ \ \dim A\leq \rank_{k}\m/\m^2$
が成り立つ.
・正則局所環は代数多様体の非特異点に対応する.

定義
$A$ をネーター環とする.
どんな素イデアルで局所化しても正則局所環になるとき, $A$ を正則環 (regular ring)という.


$A:=k[[x_1,\cdots,x_n]]$ は正則局所環である.
実際, $\m=(x_1,\cdots,x_n)$ であり,
$\ \ \ \dim A$ $=\rank_k\m/\m^2=n$
である.


$\C[x,y]/(x^2+y^2-1)$ は正則局所環である.
実際, 単位円 $x^2+y^2=1$ は非特異多様体だからである.

正則局所環でない例


$A:=\C[[X, Y]]/(XY)$ は正則局所環でない.

[証明]
$\m=(x,y)$ とおくと, $\ \ \ \dim_\C\m/\m^2=2.$
ところが, $\dim A=1$ なので,
$\ \ \ \dim_\C \m/\m^2 \neq \dim A.$
よって, $A$ は正則局所環でない. $\square$


$A:=\C[[t^2,t^3]]$ は正則局所環でない.

[証明]
$\m=(t^2, t^3)$ とおくと, $\dim_\C\m/\m^2=2.$
一方で, $\C[t^2,t^3] \subset \C[t]$ は整拡大なので,
$\dim A=\dim \C[t^2,t^3]$ $=\dim \C[t]=1$
よって, $A$ は正則局所環でない. $\square$


$A:=\C[X]/(X^2)$ は正則局所環でない.

[証明]
$\m=(x)$ とおくと, $\m^2=0$ より, $\dim_\C\m/\m^2=1.$
ところが, $\dim A=0$ なので, $\dim_\C \m/\m^2 \neq \dim A.$
よって, $A$ は正則局所環でない. $\square$

[別解]
無限自由分解:
$\xto{\times X} A \xto{\times X} A$ $ \to A/\m \to 0$
が存在するので, $\mathrm{gl}.\dim A=\infty.$
(※$A$ はネーター局所環なので $\mathrm{gl}.\dim A=\mathrm{proj}.\dim A/\m$ であることに注意.)
よって, 次の定理より, $A$ は正則局所環でない. $\square$

定理 [松村 定理19.2]
$A$ は正則局所環である.
$\iff \mathrm{gl}.\dim A= \dim A.$
$\iff \mathrm{gl}.\dim A<\infty.$

参考文献

松村英之「可換環論」共立出版

可換環論
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