Gorenstein環の判定法
この記事では環がGorenstein環(ゴレンシュタイン環)であるかどうか判定する方法を紹介します。
下記がポイントです。
「0次元ネーター環がGorensteinであるか?」という問題に帰着させる.
まず, Gorenstein環の定義を確認します。
定理A
$(A,\m,k)$ を $n$ 次元ネーター局所環とする.
このとき次の条件はすべて同値である.
(1) $\inj.\dim A=n.$
(2) $A$ はCohen-Macaulay環で $\Ext_A^n(k,A)\cong k.$
(3) $A$ はCohen-Macaulay環で, $A$ のどんな巴系イデアルも既約.
定義
上の同値な条件が成り立つようなネーター局所環をGorenstein環
(Gorenstein ring)という.
※一般に,ネーター環の任意の局所化がGorensteinであるとき,
その環をGorensteinという.
このように局所環でないネーター環でもGorenstein環が定義される.
例
例
体 $K$ はGorenstein環である.
[証明]
体は0次元ネーター局所環なのでCohen-Macaulay環である.
また, 体は0次元なので, 定理A(2)の $\Ext_A^n(k,A)=k$ を示せばよい.
$K=A=k$ であるので,
\[\Ext_A^n(k,A)=\Ext_k^0(k,k)=\Hom_k(k,k)=k.\]
体 $K$ はGorensteinなので, 次の定理より, 多項式環 $K[x_1,\cdots,x_n]$ はGorensteinである.
定理B[松村 問題18.3]
$A$ がGorenstein環ならば $A[x]$ もそうである.
ネーター環が1次元以上のとき, 次の定理が役に立つ.
定理C[松村 問題18.1]
$(A,\m)$ をネーター局所環,
$x_1,\cdots,x_r$ を $A$ 列, $B=A(x_1,\cdots,x_r)$ とする.
このとき, $A$ がGorenstein $\iff$ $B$ がGorenstein.
例
$\C[x,y]/(x^2,y^2)$ はGorensteinである.
[証明]
$\C[x,y]$ はGorensteinであり, $x^2,y^2$ は $\C[x,y]$ 列なので,
定理CよりGorensteinである.
Gorenstein環でない例
例
$A:=\C[x,y]/(x^2,xy,y^2)$ はGorensteinでない.
[証明]
$(0)=(x)\cap (y)$ より, $(0)$ は既約イデアルでない.
よって, 定理A(3)よりGorensteinでない.
例
$A:=\C[[t^3,t^4,t^5]]$ はGorensteinでない.
[証明]
$A$ がGorensteinであると仮定する.
$t^3$ は $A$ 列なので, $A/(t^3)$ もGorenstein環のはずである.
ところが,
\[A/(t^3)\cong \C[x,y]/(x^2,xy,y^2)\ \ \cdots (*)\]
であり, 右辺はGorensteinでないので矛盾.
よって, $A$ はGorensteinでない.
補足
$A/(t^3)\cong \C[x,y]/(x^2,xy,y^2)$ になる理由:
$A/(t^3)$ において,
$\ \ \ t^4\cdot t^4 = t^3\cdot t^5=0,$
$\ \ \ t^4\cdot t^5 = (t^3)^3=0,$
$\ \ \ t^5\cdot t^5 = (t^3)^2\cdot t^4=0.$
なので, $x=t^4,\ y=t^5$ とすれば同型対応になる.