Takatani Note

アルティン環

定義

定義
環 $A$ がアルティン環であるとは, 次の条件を満たす環である.
$A$ のイデアルに関する減少列:
$\ \ \ I_1\supseteq I_2\supseteq\cdots$
に対して, ある自然数 $n$ が存在して, $I_n=I_{n+1}=\cdots$ となる.

定理
次の条件は同値である.
(1) $A$ はアルティン環である.
(2) $A$ はネーター環でかつ $\dim A=0$ である.


体はアルティン環である.
実際, 体 $K$ のイデアルは $(0)$ と $K$ 自身のみだからである.


$\R[x](x^3)$ はアルティン環である.
実際, $\R[x](x^3)$ のイデアルは,
$\ \ \ (0),\ (x),\ (x^2),\ \R[x](x^3)$
しかなく, 有限個なので, アルティン環である.
同様に, $\R[x](x^n)$ や $\R[x](x^3,y^2)$ もアルティン環である.

定理
アルティン環が整域ならば体である.

証明
$A$ をアルティン環とする.
任意の $(0\neq ) a\in A$ をとる.
$(a^n)=(a^{n+1})$ となる正の整数 $n$ が存在するので, ある $x\in A$ に対して $a^n=xa^{n+1}$ となる.
$a^n(1-ax)=0$ より $ax=1.$
よって, $A$ は体である.$\ \ \square$

言い換えれば, アルティン環は体でなければ整域でない.

性質

定理
アルティン環 $A$ において, すべての素イデアルは極大イデアルである.

証明
$A$ をアルティン環とし, $\p$ を $A$ の素イデアルとする.
$A/\p$ はアルティン整域なので, 前定理より $A/\p$ は体である.
よって $\p$ は極大イデアルである. $\ \ \square$

この定理より, アルティン環は0次元であることがわかる.

参考文献

[AM] Atiyah, M. F. and Macdonald, I. G.
"Introduction to Commutative Algebra"
Addison-Wesley. (1969)
[M] 松村英之 "可換環論" 共立出版 (1980)

可換環論
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