Takatani Note
$ \newcommand{\a}{\mathfrak{a}} \newcommand{\b}{\mathfrak{b}} $

準素イデアル

定義
環 $A$ のイデアル $\q (\neq A)$ は次の条件を満たすとき, 準素イデアルという.
$x,y\in A$ に対して, $xy\in \q$ ならば, $x\in \q$ または, ある $n>0$ に対して $y^n\in \q.$

上の定義は次のように剰余環を使って言い換えられる.

命題
環 $A$ のイデアル $\q (\neq A)$ が準素イデアルである必要十分条件は, $A/\q\neq 0$ かつ $A/\q$ のすべての零因子はベキ零元である.

明らかにすべての素イデアルは準素イデアルである.


$(p^n)$ は $\Z$ の準素イデアルである.
ここで, $p$ は素数である.


$A=\R[x,y]$ とおき, $\q=(x^3,y^2)$ とする.
このとき, $A/\q$ における零因子はすべてベキ零元である.
従って, $\q$ は準素イデアルである.

根基イデアル

定義
$\mathfrak{a}$ を環 $A$ のイデアルとするとき, $\a$ の根基 (radical) $r(\a)$ を次のように定める.
$\ \ \ r(\a)=\{x\in A\mid$ ある $n>0$ に対して $x^n\in \a\}$
この $r(\a)$ はイデアルになるので, 根基イデアルとも呼ばれる.


$\Z$ において, $\a=(8),\ \b=(12) $ とすると,
$\ \ \ r(\a)=(2),\ r(\b)=(6)$
である.


$\R[x,y]$ において, $\q=(x^3,y^2)$ とする.
このとき $\q$ の根基イデアルは $(x,y)$ である.

準素イデアルと根基イデアルの関係

命題[AM Prop 4.1]
$\q$ を環 $A$ の準素イデアルとする.
このとき, 根基 $r(\q)$ は素イデアルである.

$\q$ が準素イデアルであるとき, $\p=r(\q)$ とおき, $\q$ は $\p$-準素イデアルであるという.
つまり, 根基が $\p$ となる準素イデアルのことを $\p$-準素イデアルである.


$A=\R[x,y]$ とおき, $\m=(x,y)$ とする.
$\m^2=(x^2,xy,y^2)$ は $\m$-準素イデアルである.
実際, $A/\m^2$ における零因子はすべてベキ零元だからである.

一般に, $\m$ が $A$ の極大イデアルならば, 正の整数 $n$ に対して $\m^n$ は $\m$-準素イデアルである.

性質

定理
$r(\a)$ が極大イデアルならば $\a$ は準素イデアルである.


$A=\C[x,y],\ \a=(x^3,y^2)$ とすると, $r(\a)=(x,y).$