行列式【性質と証明】
この記事では、行列式(determinant)の性質を証明します。
定義
次正方行列 に対して, を
と定める. この を
の行列式(determinant)という.
を と表すこともある.
※文献によっては
のように、添え字が逆に定義されているので注意.
行列式の性質
転置行列の行列式
定理
任意の正方行列 に対して,
- ▼ 証明
-
[証明]
とすれば,
が を動くとき, も を動くから,
は全体としては
と一致しているから,
これを小さい順に並べかえる. 任意の に対し,
とすれば, であるから,
これは にほかならない.
この定理により, 行列式に関する性質で, 列に関して成り立つことは,
すべて行に関しても成り立つことがわかる.
多重線形性と交代性
定理 (多重線形性)
とする. 各 に対して,
- ▼ 証明
-
[証明]
加法的:
スカラー倍:
定理 (交代性)
任意の に対して,
- ▼ 証明
-
[証明]
まず, 次の(a),(b)が成り立つことに注意しよう.
(a)写像 は全単射である.
(b) .
従って
系
行列 の二つの列(または行)が一致すれば
[証明]
行列式の交代性から成り立つ.
系
行列 の二つの列(または行)をとりかえたものを
とすると,
[証明]
行列式の交代性から成り立つ.
定理
行列 のある列(または行)に対して,
他のある列(または行)の定数倍を加えて得られる行列式は,
に等しい. 例えば, 列の場合,
ただし, 左辺は の第 列に第 列の
倍を加えた得られた行列の行列式.
[証明]
行列式の多重線形性と交代性から成り立つ.
次の定理は行列式を特徴づけるものである.
定理
個の 項列ベクトルの組
に対して数 を対応させる写像 が,
多重線形性:各 に対して,
および交代性:各 に対して,
の両性質を持つならば, は定数倍を除いて写像 に一致する.
詳しくは,
た成り立つ. ただし, は単位ベクトルである.
- ▼ 証明
-
[証明]
とおく. 多重線形性を繰り返し用いると,
となる. この一つの項において,
のなかに同じものがあれば,
交代性により,
である. がすべて相異なれば,
は 文字の置換であるから, 再び交代性により,
となる. したがって,
行列式の積
定理X
次正方行列 に対して,
- ▼ 証明
-
[証明]
行列式の定義から直接証明できるが(少しややこしいので)ここでは前定理を用いて証明する.
を 次行列とし, とする.
とおく. 簡単にわかるように, は多重線形性および交代性をもつ.
したがって,
逆行列の行列式
定理Y
を正則行列とし, その逆行列を とする. このとき,
- ▼ 証明
-
[証明]
行列式は基底変換によらない
定理Z
を 次正方行列とし,
を 次正則行列とする. このとき,
- ▼ 証明
-
[証明]
※正方行列 のトレース も同様の性質をもつ. つまり
が成り立つ. 証明はトレースの性質【証明】にある.
が正則行列
定理
を正方行列とする. このとき,
さらに, このとき の逆行列は
である.
ここで は の余因子行列である.
- ▼ 証明
-
[証明]
が正則ならば, となる正方行列 がとれる.
であるから, 特に である.
のとき,
とおくと,
ゆえに は正則である.
上の計算から, の逆行列は
で与えられる.
行列式のブロック
定理
行列 について,
の第1列が2行目以下ですべて0ならば次が成り立つ.
※第1列の成分が2行目以下では全部0のとき
- ▼ 証明
-
[証明]
を 上の置換全体とする.
により,