群の準同型定理【証明と応用】
この記事では、次の定理について証明と応用問題を扱います。
- 準同型定理 (第1同型定理)
- 第2同型定理
- 第3同型定理
準同型定理の応用では、群の同型を示す問題を扱います。
準同型定理の証明
準同型定理
準同型定理 (第1同型定理)
を群の準同型写像とする. このとき,
特に が全射のとき が成り立つ.
- ▼ 証明
-
[証明]
とおく.
から誘導される全単射
が同型写像であることを示せばよい.
そのために, 次の2つを示そう.
(1) はwell-definedである.
(2) が準同型写像である.
(1) であるとき,
ある が存在して, である.
したがって, はwell-definedである.
(2) に対して,
ゆえに, は準同型写像である.
以上で, 定理は証明された.
第2同型定理
第2同型定理
を群 の部分群とし, とする. このとき,
- ▼ 証明
-
[証明]
とすると,
は準同型写像である. (※ は単位元.)
よって,
が成り立つ.
[補足]
が準同型写像である理由:
なので, に対して,
が成り立つ.
よって, は準同型写像である.
第3同型定理
第3同型定理
を群 の正規部分群とし,
とする. このとき,
- ▼ 証明
-
[証明]
とすると,
は準同型写像である.
よって,
が成り立つ.
[補足]
が準同型写像である理由:
かつ なので, に対して,
が成り立つ.
よって, は準同型写像である.
応用問題
準同型定理 (群の同型を示す問題)
問題
乗法群 について,
を示せ.
- ▼ 証明
-
[証明]
と定める.
より, は準同型写像である.
は全射であり,
よって,
問題
を示せ.
- ▼ 証明
-
[証明]
とすると, は全射で,
従って, 準同型定理より,
問題
を対称群, を交代群とする.
このとき, を示せ.
- ▼ 証明
-
[証明]
と定める.
ただし, は, が偶置換なら ,
奇置換なら とする.
このとき, は全射であり,
よって,
※
問題
を示せ.
ただし, 記号は下記のとおりである.
は実数成分の 次正方行列全体
- ▼ 証明
-
[証明]
と定める.
より, は準同型写像である.
は全射であり,
よって,
問題
を特殊直交群, を直交群とする.
であることを示せ.
- ▼ 証明
-
[証明]
とすると, は全射な準同型写像である.
なぜなら, であり,
対角行列 については
となるからである.
このとき, なので, 準同型定理より,
第2同型定理
問題
を の正規部分群:
とする. このとき次の同型を示せ.
- ▼ 証明
-
[証明]
として, 第2同型定理より,
一方, より, よって,
[補足]
である理由:
であり, 写像
は単射であることを示せばよい.
※ は集合の直積で, 元の個数は24である.
実際, として,
が成り立っているとする.
両辺に を左からかけて, さらに, を右からかけると,
左辺は の元, 右辺は の元なので,
両辺は の元である.
したがって,
ゆえに,
よって, は単射である.
第3同型定理
問題
同型 を示せ.
- ▼ 証明
-
[証明]
は可換群なので, その部分群 はともに
の正規部分群である. したがって, 第3同型定理より,