共役類と類等式【例と応用】
この記事では,
・対称群 の共役類と類等式
・交代群 の共役類と類等式
・類等式の証明&応用
について解説します。
共役類
まず、共役と共役類の定義を確認しておこう.
定義
群 の2つの元 が共役であるとは,
となる が存在するときにいう.
が共役のとき と表す.
この は における同値関係になる.
の共役による同値類を の共役類といい, で表す.
共役類は群の構造を調べるのに強力な道具である.
次の類等式も重要な道具だ.
定理
を有限群 の共役類をすべて列挙したものだとすると,
が成り立つ.
この等式を類等式という.
類等式の証明は後で述べる.
それでは、共役類の例を紹介する.
対称群の共役類
例
対称群 の共役類は次の3つである.
類等式は である.
例
対称群 の共役類は次の5つである.
- ▼ 5つの共役類
-
類等式は である.
交代群の共役類
例
交代群 は巡回群 に同型であり,
従ってアーベル群なので, の共役類は次の3つである.
例
交代群 の共役類は次の4つである.
- ▼ 4つの共役類
-
類等式は である.
類等式
類等式の証明のために, 次の補題を示す.
なお, この補題はさらに一般化でき、それはシローの定理の証明に使われる.
そのため, 群論において意外と重要な補題である.
補題
を有限群とする.
このとき, の元
の共役類に含まれる元(すなわち に共役な元)の個数は
に等しい.
- ▼ 証明
-
[証明]
の共役類は
の全体からなる.
このうち異なる元はいくつあるか調べないといけない.
そのために, に対して
が成り立つための条件を考えよう.
この等式は, 両辺の左から 右から を掛ければ,
と書き直される.
したがって, となるためには,
すなわち,
であることが必要かつ十分である.
ゆえに のうち異なる元の個数は,
を法とする異なる左剰余類の個数に等しい.
この補題によって, 特に の共役類が のみから成ることは,
すならち であることと同等である.
これは が の中心 の元であることを意味する.
つまり, 中心 に属する各元はそれぞれその1個の元のみで共役類を構成し,
に属さない元は2個以上の元で共役類を構成する.
このことから次の定理が得られる.
定理
を有限群とし, をその中心とすれば,
が成り立つ.
ただし, は中心 に属さない元によって構成されるすべての共役類からそれぞれ1つずつ代表元
をとって作った総和を意味する.
この式を類等式という.
※類等式の右辺の各項 は1より大きく, の真の約数となっている.
類等式の応用
定理1
が 群ならば, その中心 は単位元以外の元を含む.
※ 群とは位数が素数 のべき
である群のことである.
[証明]
とすれば, 類等式の右辺の各項 もやはり
のべき である.
ゆえに 類等式から は で割り切れなければならない.
したがって は 以外の元を含む.
定理2
群 の位数が ( は素数)ならば は可換群である.
- ▼ 証明
-
[証明]
の中心 が と一致することを示せばよい.
定理1によって であるから, または である.
もし ならば, を に属さない の元とするとき,
は のすべての元を含むとともに をも含むから,
である.
しかもそれは の約数でなければならないから,
すなわち となる.
ゆえに となるが, これは矛盾である.
したがって, でなければならない.
特に, 位数4,位数8の群は可換群である.