群論のオススメ参考書
この記事では群論のオススメ参考書として次の4冊を紹介します。
1.代数系入門/松坂和夫
2.代数演習/横井英夫・硲野敏博
3.代数学1群と環/桂利行
4.群・環・体入門 / 新妻弘
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代数系入門 / 松坂和夫
「集合・位相入門」で有名な松坂和夫の著書です。
この本は群・環・体・ガロア理論といった代数系の基礎を解説しています。
群論は第2章にあり、目次は下記のとおりです。
第2章 群
§1 写像
§2 群とその例
§3 部分群と生成系
§4 剰余類分解
§5 正規部分群と商群
§6 準同型写像
§7 自己同型群,共役類
§8 巡回群
§9 置換群
§10 置換表現,群の集合への作用
§11 直積
§12 Sylowの定理
上記のとおり、初学者が学ぶべき群論の基本事項が網羅されています。
そして,どの概念の説明も丁寧でわかりやすいです。
とくに、初学者がつまづきやすい剰余類分解と商群のところはうまく説明されているのがいいです。
ただ、この本の欠点として具体例が少ないことです。
対称群の計算や、正規部分群の例があまり書かれていないです。
なので,抽象的な議論に慣れていない人にとって、わかりにくいかもしれません。
でも、繰り返しますが証明や概念の説明がとても丁寧でなので、 一般論の詳しい説明が知りたい人にとって最適の本です。
具体的な例を知りたい人は次に紹介する、「代数演習」を本書と併用して勉強することをオススメします。
![代数系入門 松坂和夫](image/matsuzaka.jpg)
代数演習 / 横井英夫・硲野敏博
群・環・体の演習書。
具体例や計算が豊富で、問題を解くことによって、抽象的な概念や定理の理解が深まる良い本です。
個人的には下記の問題がよかったです。
・2つの群が同型でないことを示す
(例:加法群 $\R$ と加法群 $\C$ は同型でない)
・対称群と同型な群について
(例:$S_4/V\cong S_3)$
・群準同型定理の応用
(例:2つの群の同型を示す)
上記の問題を解くことによって、抽象的だと感じていた群論も、具体的なイメージを持てるようになれました。
さっき紹介した[松坂]と併用して用いるのがオススメです。
[松坂]で定理の証明を勉強して、具体例や計算問題は本書で補う、という方法で勉強すれば効率が良いと思います。
![代数演習 / 横井英夫・硲野敏博](image/yokoi.jpg)
代数学1 群と環/ 桂利行
コンパクトにまとまっています。
・概念の例や、定理の応用など具体例がのっていて、
抽象的な説明で終わらせていない。
・群論のマニアックな内容を扱っていない
・準同型定理までの群論の基礎をてっとりばやく学べる
それゆえ初学者向けです。
逆に、初学者ではない人にとっては内容が少なく不満だと思います。
個人的によかったところは準同型写像の例が豊富な点です。
この例を知ったおかげで、準同型写像の具体的なイメージが持て、理解が深まりました。
値段が1500円ぐらいで安いのも利点です。
![代数学1 群と環/ 桂利行](image/katsura.jpg)
群・環・体入門 / 新妻弘
本書は群・環・体の基本的な内容を豊富な具体例で丁寧に解説しています。
初学者向けの本で、数学科以外の人にもオススメです。
目次は次のとおりです。
目次
第1章 整数
(基本的な性質;合同式;オイラーの関数、メビュースの関数)
第2章 群
(群の定義と群の例;部分群、結合法則;巡回群、群の位数、元の位数 ほか)
第3章 環と体
(環;環のイデアル、剰余環、有理整数環Z;環の準同型写像、準同型定理 ほか)
上記のとおり、基本的な内容を中心に説明しています。
ただ、群の作用やシローの定理などは扱っていないので、
数学科の学生は別の本でそれらを補う必要があります。
![群・環・体入門 / 新妻弘](image/niizuma.jpg)