最小分解体の例
この記事では, 最小分解体の例を紹介します。
まず、最小分解体の定義を確認しておきましょう。
定義
$L/K$ を拡大体とし,
$f(x)\in K[x]$ は定数でない多項式とする.
$f(x)=0$ の根がすべて $L$ に属するとき,
$L$ を $f(x)$ の分解体という.
とくに, $L$ のいかなる真の部分体も $f(x)$ の分解体にならないとき,
すなわち, $f(x)=0$ の根 $\a_1,\cdots,\a_n$ をすべて $K$ に添加して
\[ L=K(\a_1,\cdots,\a_n)\]
が得られるとき, 体 $L$ を $f(x)$ の $K$
上の最小分解体という.
$\newcommand{o}{\omega}$
最小分解体の例
例
$f(x)=x^2+1$ の $\Q$ 上の最小分解体は $\Q(i)$
である.
ただし, $i$ は虚数単位とする.
[証明]
\[f(x)=(x-i)(x+i) \]
であるから, $f(x)$ の根は $i,-i$ である.
したがって, $\Q$ 上の $f(x)$ の最小分解体は
\[\Q(i,-i)\]
である.
これが $\Q(i)$ に等しいことは明らかである.
例
$f(x)=x^3-7$ の $\Q$ 上の最小分解体は $\Q(\sqrt[3]{7},\o)$
である.
ただし, $\o$ は1の3乗根とする.
[証明]
$\a=\sqrt[3]{7}$ とおくと,
\[f(x)=(x-\a)(x-\o\a)(x-\o^2\a)\]
であるから, $f(x)$ の根は $\a,\ \o\a,\ \o^2\a$ である.
したがって $\Q$ 上の $f(x)$ の最小分解体は
\[\Q(\a,\ \o\a,\ \o^2\a)\]
である.
これが $\Q(\sqrt[3]{7},\o)$ に等しいことは容易に示せる.
例
$f(x)=x^3+ax^2+bx+c$ を $\Q$ 上の多項式とし,
$f(x)$ の根を $\a,\b,\g$ とする.
このとき, $\Q$ 上の最小分解体は $\Q(\a,\b,\g)$ である.
例
$f(x)=(x^2-2)(x^2-3)$ の
$\Q$ 上の最小分解体は $\Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$
である.
[証明]
\[f(x)=(x-\sqrt{2})(x+\sqrt{2})(x-\sqrt{3})(x+\sqrt{3})\]
であるから, $f(x)$ の根は $\pm\sqrt{2},\pm\sqrt{3}$ である.
したがって $\Q$ 上の $f(x)$ の最小分解体は
$\Q(\sqrt{2},\sqrt{3})$ である.