Takatani Note

3次元アインシュタイン多様体は定曲率である

この記事では, 次の定理を示す.

定理
3次元アインシュタイン多様体は定曲率である.

証明には補題を2つ使う.

補題1
$(M,g)$ を3次元リーマン多様体とし, 任意の $p\in M$ をとる.
$e_1,e_2,e_3$ を $T_p(M)$ の正規直交基底とする. このとき,
\[ 2\l R(e_j,e_k)e_k,\ e_j\r =\Ric(e_j,e_j)+\Ric(e_k,e_k)-\Ric(e_i,e_i). \] ただし, $\{ i,j,k\}$ は $\{1,2,3\}$ の巡回置換とする.

[証明]
\[ \eq{ \Ric(e_i,e_i) & =\sum_{h=1}^3< R(e_h,e_i)e_i,\ e_h> \\ & =\l R(e_j,e_i)e_i,\ e_j\r+\l R(e_k,e_i)e_i,\ e_k\r }\] ($\because\ R(X,Y)=-R(Y,X)$ より, $R(e_i,e_i)=0.$ よって, $\l R(e_i,e_i)e_i,\ e_i\r=0.$)
従って, $i,j,k$ を巡回させると, 次の3式を得る. \[\eq{ \Ric(e_i,e_i) & =\l R(e_j,e_i)e_i,\ e_j\r+\l R(e_k,e_i)e_i,\ e_k\r \ \ \ \cdots (1) \\ \Ric(e_j,e_j) & =\l R(e_k,e_j)e_j,\ e_k\r+\l R(e_i,e_j)e_j,\ e_i\r \ \ \ \cdots (2) \\ \Ric(e_k,e_k) & =\l R(e_i,e_k)e_k,\ e_i\r+\l R(e_j,e_k)e_k,\ e_j\r \ \ \cdots (3) }\] $(2)+(3)-(1)$ をして,
公式 $\l R(X,Y)Z,W\r =\l R(Z,W)X,Y \r$ を用いると,
\[ 2\l R(e_j,e_k)e_k,\ e_j\r= \Ric(e_j,e_j)+\Ric(e_k,e_k)-\Ric(e_i,e_i).\]

シューアの補題
$M$ を3次元リーマン多様体とする.
各点 $p\in M$ で, 断面曲率 $K_{\sigma}$ が, 任意の $\sigma \subset T_p(M)$ に対して一定値をとるとする.
このとき, $\dim M \geq 3$ ならば, $M$ は定曲率である.

[証明]
[酒井]のⅡ命題3.6 を参照せよ.

これで準備が整ったので, 定理を証明しよう.

定理
3次元アインシュタイン多様体 $M$ は定曲率である.

[証明]
任意の $p\in M$ をとる.
シューアの補題より, $p$ での断面曲率 $K_{\sigma}$ が一定であることを示せばよい.
任意の2次元部分空間 $\sigma \in T_p(M)$ をとる.
$\sigma$ の正規直交基底をとり, それを $\{e_1,e_2\}$ とする.
さらに, $\{e_1,e_2,e_3\}$ が $T_p(M)$ の正規直交基底となるように $e_3$ をとる. このとき,
\[ K_{\sigma}=\l R(e_1,e_2)e_2,\ e_1\r\] と表せる.
$M$ はアインシュタイン多様体なので, $\Ric=\lambda g$ を満たす定数 $\lambda\in \R$ がある.
従って, $\Ric(e_i,e_i)=\lambda g(e_i,e_i)=\lambda.\ (i=1,2,3)$
これと補題1より, \[ 2K_{\sigma}=\lambda+\lambda-\lambda=\lambda. \] \[ \therefore\ K_{\sigma}=\dfrac{\lambda}{2}=\text{(constant)}.\] よって, シューアの補題より, $M$ は定曲率である.

アインシュタイン多様体は3次元ならば定曲率であるけれど, 4次元の場合は一般には定曲率でない.
例えば, 相対性理論で有名なシュバルツシルト時空は定曲率でない.