Takatani Note

複素関数の極限と連続性【例題】

$ \def\zb{\overline{z}} \def\del{\delta} \def\all{\forall} \def\exi{\exists} \def\Ra{\Longrightarrow} $

この記事では, 複素関数の極限と連続性に関する例題・問題を扱います。

複素関数の極限

定義
$f(z)$ を集合 $S\sub \C$ 上で定義された複素関数とする. $z\to\a$ のとき, その近づき方によらずに $f(z)$ が複素数 $\b$ に限りなく近づいていくとき, $f(z)$ は $\b$ に収束するといい, $$ \lim_{z\to \a}f(z)=\b \te{または} f(z)\to \b \ \ \ (z\to\a) $$ などと表す. このとき, $\b$ を $z\to\a$ のときの $f(z)$ の極限値という. $f(z)$ が収束しないときは発散するという.

例題
次の複素関数の収束・発散を調べよ. 収束するときにはその極限値を求めよ.
$(1)\lim_{z\to 0}\f{z}{|z|} \ \ \ \ \ (2)\lim_{z\to 0}\f{z^2+4}{z^2-2iz} $

[解答]  (1) $z=re^{i\t}\ (r>0)$ とおくと, $|z|=r$ であるから, $$ \f{z}{|z|}=\f{re^{i\t}}{r}=e^{i\t} $$ となる. この値は $\t$ の値によって異なるから, $z\to 0$ のとき, $\f{z}{|z|}$ は発散する.

(2) $$ \lim_{z\to 2i}\f{z^2+4}{z^2-2iz} =\lim_{z\to 2i}\f{z+2i}{z}=\f{2i+2i}{2i}=2 $$

複素関数の連続性

定義
$f(z)$ を集合 $S\sub \C$ 上で定義された複素関数とする. $f(z)$ が点 $a\in S$ で連続であるとは, $$ \lim_{z\to a}f(z)=f(a) $$ が成り立つとき, 厳密には, $$ \all \e >0\ \ \exi \del >0\ :\ \ \ |z-a|<\del \Ra |f(z)-f(a)|<\e $$ が成り立つときときをいう.

また, $f(z)$ が $S$ の各点で連続であるとき, $f(z)$ は $S$ 上で連続であるという.

例題
次の複素関数が $z=0$ で連続であることを示せ.
$$ f(z)=\case{ \f{z^2}{|z|} & (z\neq 0) \\ 0 & (z=0) }$$

[解答]  $\e>0$ を固定する. $\del=\e$ とすると, $0< |z|< \del$ のとき, $$ |f(z)-f(0)|=\le| \f{z^2}{|z|} \ri| =\f{|z|^2}{|z|}=|z|<\del =\e. $$ ゆえに, $f(z)$ は $z=0$ で連続である.

例題
次の複素関数が $z=0$ で連続でないことを示せ.
$$ f(z)=\case{ \f{\zb}{z} & (z\neq 0) \\ 0 & (z=0) }$$

[解答]  $\e=1$ とし, 任意の $\del >0$ をとる. $z=\del/2$ とすれば $0< |z|< \del$ を満たし, かつ, $$ |f(z)-f(0)|=\f{\del/2}{\del/2}=1 \geq \e. $$ ゆえに, $f(z)$ は $z=0$ で連続でない.

問題

極限

問題
次の複素関数の収束・発散を調べよ. 収束するときにはその極限値を求めよ.
$(1)\lim_{z\to 0}\f{z}{\zb} \ \ \ \ \ (2)\lim_{z\to i}\f{z^2+1}{(z-i)(2z-i)}$

解答
[解答]  (1) $z=re^{i\t}\ (r>0)$ とおくと, $|z|=r$ であるから, $$ \f{z}{\zb}=\f{re^{i\t}}{re^{-i\t}}=e^{2i\t} $$ となる. この値は $\t$ の値によって異なるから, $z\to 0$ のとき, $\f{z}{\zb}$ は発散する.

(2) $$ \lim_{z\to i}\f{z^2+1}{(z-i)(2z-i)} =\lim_{z\to i}\f{(z-i)(z+i)}{(z-i)(2z-i)} =\lim_{z\to i}\f{z+i}{2z-i} =\f{i+i}{2i-i}= 2 $$

連続性

問題
次の複素関数が $z=0$ で連続であることを示せ. $$ f(z)=\case{ \f{\zb^2}{z} & (z\neq 0) \\ 0 & (z=0) }$$

解答
[解答]  $\e>0$ を固定する. $\del=\e$ とすると, $0< |z|< \del$ のとき, $$ |f(z)-f(0)|=\le| \f{\zb^2}{z} \ri| =\f{|z|^2}{|z|}=|z|<\del =\e. $$ ゆえに, $f(z)$ は $z=0$ で連続である.

問題
次の複素関数が $z=0$ で連続であることを示せ. $$ f(z)=\case{ \f{\mathrm{Re}\ z}{2+|z|} & (z\neq 0) \\ 0 & (z=0) }$$

解答
[解答]  $\e>0$ を固定する. $\del=\e$ とし, $z=x+iy$ とすれば, $0< |z|< \del$ のとき, $$ |f(z)-f(0)|=\le| \f{x}{2+\r{x^2+y^2}} \ri| \leq \f{x}{2} \leq x \leq |z| < \del =\e. $$ ゆえに, $f(z)$ は $z=0$ で連続である.

メモ:関数の連続性の証明問題について, ある区間上の連続性を示すのはやや手間がかかる問題が多いが、ある一点の連続性を示すことは簡単な問題が多い.

連続でない

問題
次の複素関数が $z=0$ で連続でないことを示せ. $$ f(z)=\case{ \f{\mathrm{Im}\ z}{|z|} & (z\neq 0) \\ 0 & (z=0) }$$

解答
[解答]  $\e=1$ とし, 任意の $\del >0$ をとる. $z=i\del/2$ とすれば $0< |z|< \del$ を満たし, かつ, $$ |f(z)-f(0)|=\f{\del/2}{\del/2}=1 \geq \e. $$ ゆえに, $f(z)$ は $z=0$ で連続でない.