ベルヌーイの微分方程式【例題】
$$ \newcommand{\a}{\alpha} $$
この記事では、次の3種類の微分方程式について例題を紹介します。
- ベルヌーイの微分方程式
- リッカチの微分方程式
- クレローの微分方程式
ベルヌーイの微分方程式
次の形の微分方程式をベルヌーイの微分方程式という. $$ y'+p(x)y=q(x)y^m\ \ \ (m\neq 0,1) $$ $y=0$ は解であり, $y\neq 0$ ならば, $z=y^{1-m}$ とおくことにより, $z$ の1階の線形微分方程式になる. ※もし, $m=0,1$ ならば, すでに1階の線形微分方程式である.
さて, この微分方程式の両辺に $y^{-m}$ をかけると $$ y^{-m}\f{dy}{dx}+p(x)y^{1-m}=q(x) $$ となる. $z=y^{1-m}$ とおくと $$ \f{dz}{dx}=\f{dz}{dy}\f{dy}{dx} =(1-m)y^{-m}\f{dy}{dx} $$ であるから, $$ y^{-m}\f{dy}{dx}=\f{1}{1-m}\f{dz}{dx} $$ である. これを用いると, 上の方程式は $$ \f{dz}{dx}+(1-m)p(x)z=(1-m)q(x) $$ と書けて, $z$ に関する1階の線形微分方程式に帰着される.
例題
次の微分方程式を解け.
$$ y'+y=xy^3 $$
- ▼ 解答
-
[解答]
$y'+y=xy^3$ の両辺に $y^{-3}$ をかけると $$ y^{-3}y'+y^{-2}=x. $$ $z=y^{-2}$ とおくと, $$ z'=\f{dz}{dx}=\f{dz}{dy}\f{dy}{dx}=-2y^{-3}y' $$ より, $$ -\f{1}{2}z'+z=x $$ となり, 1階の線形微分方程式に帰着される. これを解くと, 一般解 $$ y^2\le(x+\f{1}{2}+Ce^{2x}\ri)=1 $$ を得る.
例題
次の微分方程式を解け.
$$ y'-2xy=y^2 $$
- ▼ 解答
-
[解答]
$y'-2xy=y^2$ の両辺に $y^{-2}$ をかけると $$ y^{-2}y'-2xy^{-1}=1. $$ $z=y^{-1}$ とおくと, $$ z'=\f{dz}{dx}=\f{dz}{dy}\f{dy}{dx}=-y^{-2}y' $$ より, $$ z'+2xz=-1 \tag{*}$$ となり, 1階の線形微分方程式に帰着される. 微分方程式 $(*)$ を解くと, $$ z=e^{-x^2}\le( -\int e^{x^2}dx +C \ri) $$ である. よって, 一般解 $$ y=z^{-1} =\f{e^{x^2}}{\le( -\int e^{x^2}dx +C \ri)} $$ を得る.
[補足]
微分方程式 $(*)$ を解く. まず, 斉次形 $$ z'+2xz=0 $$ について, これは変数分離形なので, 容易に一般解 $z=Ce^{-x^2}$ を得る. 次に, $$ z=C(x)e^{-x^2} \tag{**} $$ とおいて, $(*)$ に代入すると, $$\eq{ z'+2xz & =C'(x)e^{-x^2}-2xC(x)e^{-x^2}+2xz \\ & =C'(x)e^{-x^2}=-1 }$$ $$ \th C'(x)=-e^{x^2} $$ であるから, $$ C(x)=-\int e^{x^2}dx +C $$ これを $(**)$ に代入すれば, $$ z=e^{-x^2}\le( -\int e^{x^2}dx +C \ri) $$ を得る.
リッカチの微分方程式
次の形の微分方程式をリッカチの微分方程式という. $$ y'+p(x)y^2+q(x)y+r(x)=0 \tag{*}$$ リッカチの微分方程式の一般解を初等関数によって代数的に求積法(積分を用いて解く)で解くことは一般にできないことがリウヴィルによって証明されている. (※ただし, 正規形なので解は一意的に存在する.) しかし, 何らかの方法で特殊解を求めることができた場合は求積法で解ける. それを今から示そう.
リッカチの微分方程式に特殊解 $u(x)$ が存在すると仮定し, 一般解を $$ y=u(x)+z(x) $$ とおく. これを方程式 $(*)$ に代入すると, $$\eq{ (\te{左辺}) & = y'+py^2+qy+r \\ & =(u'+z')+p(u+z)^2+q(u+z)+r \\ & =(u'+pu^2+qu+r)+z'+pz^2+(2pu+q)z \\ & =z'+pz^2+(2pu+q)z \\ & =0 }$$ となる. (※$u(x)$ は特殊解であるから $u'+pu^2+qu+r=0$ に注意.) よって, $$ z'+p(x)z^2+\Big(2p(x)u(x)+q(x)\Big)z=0 $$ となり, ベルヌーイの微分方程式に帰着される. この方程式を解けば一般解を得られる.
例題
$y=2x$ が次の微分方程式の特殊解であることを確かめて,
次の微分方程式を解け.
$$ y'-y^2+2xy-2=0 $$
- ▼ 解答
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[解答]
$y=2x$ のとき, $y'=2$ なので, これらを微分方程式に代入すると, $$\eq{ \te{(左辺)} & =y'-y^2+2xy-2 & =2-4x^2+4x^2-2 & =0 }$$ となり, $y=2x$ は解である.
そこで, $z$ を $x$ の関数とし, $y=2x+z$ として, これを微分方程式に代入すると, $$ (2x+z)'-(2x+z)^2+2x(2x+z)-2=0. $$ 上式を整理すると, $$ z'-2xz=z^2 $$ となり, これはベルヌーイの微分方程式である. これの一般解は $$ z=\f{e^{x^2}}{\le( -\int e^{x^2}dx +C \ri)} $$ となる. したがって, 一般解は $$\eq{ y & =2x+z \\ & =2x+\f{e^{x^2}}{\le( -\int e^{x^2}dx +C \ri)} }$$ である.
クレローの微分方程式
次の形の微分方程式はクレローの微分方程式と呼ばれている. $$ y=xy'+f(y') \tag{1} $$ $y'=p$ とおくと, 上式は $$ y=xp+f(p) \tag{2} $$ となる. したがって, この両辺を $x$ で微分すると, $$ y'=p+xp'+f'(p)p' $$ $$ \th p=p+xp'+f'(p)p' $$ であるから, $$ p'(x+f'(p))=0 $$ を得る. よって, $p'=0$ のとき $p=C\ (C$ は任意定数)であり, 式 $(2)$ より, $$ y=Cx+f(C) $$ を得る. 上式は, 任意定数を含んでおり, 微分方程式(1)の一般解である. 一方, $x+f'(p)=0$ のとき, 式(2)より $$ x=-f'(p),\ \ y=-pf'(p)+f(p) $$ を得る. 上式は, 任意定数を含んでおらず, 微分方程式(1)の特異解とよばれている. これは $p$ をパラメータとする曲線であり, 一般解を与える直線群 $y=Cx+f(C)$ の包絡線になっている.
例題
微分方程式 $y=xy'-2(y')^2$ を解け.
- ▼ 解答
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[解答]
$y'=p$ とおくと $y=xp-2p^2$ である. この両辺を $x$ で微分すると $(x-4p)p'=0$ となる. これより, $x-4p=0$ または $p'=0$ である. $p'=0$ のとき, $p=C$ ($C$ は任意定数)であり, 一般解 $$ y=Cx-2C^2 $$ を得る. 一方, $x-4p=0$ のとき, $x=4p$ と $y=xp-2p^2$ より $p$ を消去して, 特異解 $y=x^2/8$ を得る.
[補足] 1階微分方程式 $F(x,y,y')=0$ は $y'$ について解いた形 $y'=f(x,y)$ に変形できるとき, 正規形であるときいい, そうでないとき非正規形であるという. クレロー型の微分方程式は非正規形の微分方程式であり, 初期値問題の解の一意性が成立しない微分方程式の例としてよく知られている. 実際, 上の例題において, 初期条件 $y(4)=2$ を満たす解としては, $y=x^2/8$ 以外にも次のようなものがある. $$ y=\case{ x-2 & (x\leq 4) \cr \f{1}{8}x^2 & (x\geq 4) }$$