Takatani Note

外積の例題【公式の証明や計算など】

$$ \newcommand{\a}{\bm{a}} \newcommand{\b}{\bm{b}} \newcommand{\c}{\bm{c}} \newcommand{\0}{\bm{0}} \newcommand{\e}{\bm{e}} \newcommand{\ti}{\times} $$

この記事では、外積に関する例題を紹介します。

外積を用いれば、曲面の法線ベクトルを簡潔に表現することができて、電磁気学や曲面論で重宝しますので、慣れておきましょう。

例題の前に、外積の定義と基本事項を確認しておきます。

定義
ベクトル $\a,\b\in\R^3$ に対して, 次の性質を満たす $\a\ti\b\in\R^3$ を $\a,\b$ の外積(cross product)という.
(1) $\a /\!/ \b$ のとき, $\a \ti \b =\0$
(2) $\a=\0$ または $\b=\0$ のとき, $\a \ti \b =\0$
(3) 上記以外のとき, $\a,\b$ のなす角を $\t$ とすると, 次の(i),(ii)を満たす.
(i)大きさは, $\a$ と $\b$ の作る平行四辺形の面積 $$ |\a||\b|\sin\t $$ に等しい.
(ii) 向きは $\a,\b$ に垂直で, $\a$ から $\b$ へ右ねじをまわすとき, ねじの進む方向である.

外積の定義から, 次が成り立つ.

定理
ベクトル $\a,\b,\c$ とスカラー $m$ について,
$(1)\ \a \ti \b=-\b\ti \a,$ 特に, $\a\ti\a=\0$
$(2)\ \a\ti(\b+\c)=\a\ti\b +\a\ti\c$
$(\a+\b)\ti \c =\a\ti \c+\b \ti \c$
$(3)\ (m\a)\ti \b=m(\a\ti\b)=\a\ti(m\b)$

定理
外積の成分表示
$\a=(a_1,a_2,a_3),\ \b=(b_1,b_2,b_3)$ の外積は $$\eq{ \a\ti\b & =(a_2b_3-a_3b_2,a_3b_1-a_1b_3,a_1b_2-a_2b_1) \\ & = \md{ \e_1 & a_1 & b_1 \cr \e_2 & a_2 & b_2 \cr \e_3 & a_3 & b_3 } }$$ と表される. ここで, $\e_1,\e_2,\e_3$ は $\R^3$ の単位ベクトルである.

証明
[証明]
単位ベクトル $\e_1,\e_2,\e_3$ は互いに直交するから次を満たす. $$ \e_1\ti\e_1=\e_2\ti\e_2=\e_3\ti\e_3=\0 $$ $$\eq{ & \e_1\ti\e_2=-\e_2\ti\e_1=e_3, \\ & \e_2\ti\e_3=-\e_3\ti\e_2=e_1, \\ & \e_3\ti\e_1=-\e_1\ti\e_3=e_2 }$$ $\a=(a_1,a_2,a_3),\ \b=(b_1,b_2,b_3)$ のとき, 前の定理を用いて計算すると, $$\eq{ \a\ti\b & =(a_1\e_1+a_2\e_2+a_3\e_3) \ti (b_1\e_1+b_2\e_2+b_3\e_3) \\ & =a_1b_1(\e_1\ti\e_1) +a_1b_2(\e_1\ti\e_2)+a_1b_3(\e_1\ti\e_3) \\ & \ \ \ +a_2b_1(\e_2\ti\e_1) +a_2b_2(\e_2\ti\e_2)+a_2b_3(\e_2\ti\e_3) \\ & \ \ \ +a_3b_1(\e_3\ti\e_1) +a_3b_2(\e_3\ti\e_2)+a_3b_3(\e_3\ti\e_3) \\ & =\0+a_1b_2\e_3-a_1b_3\e_2 - a_2b_1\e_3+ \0 + a_2b_3\e_1 + a_3b_1\e_2- a_3b_2\e_1 + \0 \\ & =(a_2b_3-a_3b_2,a_3b_1-a_1b_3,a_1b_2-a_2b_1) \\ & = \md{ \e_1 & a_1 & b_1 \cr \e_2 & a_2 & b_2 \cr \e_3 & a_3 & b_3 } }$$

例題

例題
次のベクトル $\a,\b$ の外積 $\a\ti\b$ および $\a,\b$ に垂直な単位ベクトルを求めよ.
$(1)\ \a=(1,-3,2),\b=(3,-2,4)$
$(2)\ \a=(-1,2,-2),\b=(-1,0,1)$

解答
[解答]
(1) $$ \a\ti\b= \md{ \e_1 & 1 & 3 \cr \e_2 & -3 & -2 \cr \e_3 & 2 & 4 } =(-8,2,7) $$ $\a,\b$ に垂直な単位ベクトルは $$ \pm\f{1}{|\a\ti \b|}(\a\ti \b) =\pm\f{1}{3\r{13}}(-8,2,7). $$ (2) $$ \a\ti\b= \md{ \e_1 & -1 & -1 \cr \e_2 & 2 & 0 \cr \e_3 & -2 & 1 } =(2,3,2) $$ $\a,\b$ に垂直な単位ベクトルは $$ \pm\f{1}{|\a\ti \b|}(\a\ti \b) =\pm\f{1}{\r{17}}(2,3,2). $$

例題
次のベクトル $\a, \b$ の外積となす角 $\t$ の正弦 $\sin\t$ を求めよ.
$(1)\ \a=(-1,3,2),\ \b=(-3,2,-1)$
$(2)\ \a=(5,-1,4),\ \b=(-1,3,2)$

解答
[解答]
(1) $$ \a\ti\b= \md{ \e_1 & -1 & -3 \cr \e_2 & 3 & 2 \cr \e_3 & 2 & -1 } =(-7,-7,7) $$ より, $$\eq{ |\a| & =\r{(-1)^2+3^2+2^2}=\r{14} \\ |\b| & =\r{(-3)^2+2^2+(-1)^2}=\r{14} \\ |\a\ti\b| & =\r{(-7)^2+(-7)^2+7^2}=7\r{3} }$$ これらを $|\a\ti\b|=|\a||\b|\sin\t$ に代入すると, $$ \sin\t=\f{\r{3}}{2}. $$ (2) $$ \a\ti\b= \md{ \e_1 & 5 & -1 \cr \e_2 & -1 & 3 \cr \e_3 & 4 & 2 } =(-14,-14,14) $$ より, $$\eq{ |\a| & =\r{5^2+(-1)^2+4^2}=\r{42} \\ |\b| & =\r{(-1)^2+3^2+2^2}=\r{14} \\ |\a\ti\b| & =\r{(-14)^2+(-14)^2+14^2}=14\r{3} }$$ これらを $|\a\ti\b|=|\a||\b|\sin\t$ に代入すると, $$ \sin\t=1. $$

例題
$\a+\b+\c=\0$ ならば $$ \a\ti\b=\b\ti\c=\c\ti\a $$ が成り立つことを示せ.

解答
[解答]
$$\eq{ \a\ti\b-\b\ti\c & =\a\ti\b+\c\ti\b \\ & =(\a+\c)\ti \b \\ & =-\b\ti\b \\ & =\0 }$$ よって, $$\a\ti\b=\b\ti\c.$$ 同様に, $$\b\ti\c=\c\ti\a.$$