Takatani Note

ベクトル束のオイラー標数 $\chi(E)$

$ \def\ch{\mathrm{ch}\hspace{1pt}} \def\td{\mathrm{td}\hspace{1pt}} $

この記事では、代数多様体上のベクトル束 $E$ のオイラー標数 $\chi(E)$ を求めます。
曲線、曲面、3次元多様体の場合にヒルツェブルフ・リーマン・ロッホの定理を使って計算していきます。
これらの計算を通して、ハーツホーンの付録にあるチャーン類の計算に慣れてもらいます。

以下、定義と記号は[Har]に合わせています。
ただ、局所自由層 $\E$ のことをベクトル束 $E$ と言い換えています。

曲線上のベクトル束

定理
$X$ を非特異射影曲線とし, $E$ を $X$ 上の階数2のベクトル束とする. このとき, \[ \chi(E)=\deg(E\wedge E)+2(1-g).\]

[証明]
\[\eq{ \ch(E) & =2+c_1(E), \\ \td(T_X) & =1+\f{1}{2}c_1 }\] であることと,
\[ c_1(T_X)=-c_1(\Omega_X)=-K_X \] より,
\[\eq{ \chi(E) & =\deg(\ch(E)\td(T_X))_1 \\ & =\deg(E\wedge E)-\deg K_X \\ & =\deg(E\wedge E)+2(1-g). }\]

※一般的に, 代数曲線上のベクトル束 $E$ が階数 $r$ のときは
\[ \chi(E)=\deg(\wedge^r E)+r(1-g) \] である.

$\P^2$ 上のベクトル束

定理
$X=\P^2$ とし, $E$ を $\P^2$ 上の階数2のベクトル束とする. このとき, \[ \chi(E)=2+\f{1}{2}c_1(E)(c_1(E)+K)-c_2(E).\]

[証明]
$E$ の階数は2なので, $i\geq 3$ のとき, $c_i(E)=0$ であるから,
\[\eq{ \ch(E) & =2+c_1(E)+\f{1}{2}(c_1(E)^2-2c_2(E)), \\ \td(T_X) & =1+\f{1}{2}c_1+\f{1}{12}(c_1^2+c_2). }\] ここで, 次のことに注意しよう.
\[c_1=c_1(T_X)=-c_1(\Omega_X)=-c_1(\wedge^2\Omega)=-K_X, \] \[ \f{1}{12}(c_1^2+c_2)=\chi(\O_X)=1. \] すると,
\[\eq{ \chi(E) & =\deg(\ch(E)\td(T_x))_2 \\ & =\f{1}{6}(c_1^2+c_2)+\f{1}{2}c_1(E)c_1 +\f{1}{2}(c_1(E)^2-2c_2(E)) \\ & =2+\f{1}{2}c_1(E)(c_1(E)+K)-c_2(E). }\]

3次元多様体上のベクトル束

定理
$X$ を3次元射影多様体とし, $E:=\O_X(D)$ を直線束とすると,
\[\chi(\O_X(D))=\f{1}{12}D(D-K)(2D-K) +\f{1}{12}D c_2+\f{1}{24}c_1c_2.\]

[証明]
\[ \ch(E)=1+D+\f{1}{2}D^2+\f{1}{6}D^3\] \[\td(T_X)=1+\f{1}{2}c_1 +\f{1}{12}(c_1^2+c_2)+\f{1}{24}c_1c_2\] より, \[c_1=c_1(T_X)=-c_1(\Omega_X) =-c_1(\wedge^3\Omega_X)=-K\] なので, \[\eq{ \chi(E) & =\deg(\ch(E)\td(T_X))_3 \\ & =\f{1}{6}D^3+\f{1}{4}D^2C_1 +\f{1}{12}(c_1^2+c_2)D+\f{1}{24}C_1c_2 \\ & =\f{1}{12}(2D^3-3D^2K+DK^2) +\f{1}{12}c_2 D +\f{1}{24}c_1 c_2 \\ & =\f{1}{12}D(D-K)(2D-K) +\f{1}{12}c_2 D+ \f{1}{24}c_1 c_2. }\]

定理
$X$ を3次元射影多様体とし, $E$ を $X$ 上の階数2のベクトル束とする.
このとき, 次が成り立つ.
$(1)\ c_1(End(E))=-c_1(E)^2+4c_2(E)$
$(2)\ \chi(End(E))=4\chi(\O_X) +\f{1}{2}c_1(c_1(E)^2-4c_2(E))$

[証明]
(1) $End(E)=E\ot E^\vee$ に注意しよう.
\[ c_t(E)=(1+a_1t)(1+a_2t) \] とおくと, \[ c_t(E^\vee)=(1-a_1t)(1-a_2t) \] なので,
\[\eq{ c_t(E\otimes E^\vee) & =(1+(a_1-a_2)t)(1+(a_2-a_1)t) \\ & =1-(a_1-a_2)^2t^2 \\ & =1+(-c_1(E)^2+4c_2(E))t^2. }\] よって, (1)が成り立つ.

(2)$E\otimes E^\vee$ の階数は4であることに注意しよう.
\[\eq{ \ch(E\ot E^\vee) & =e^{a_1-a_2}+e^{a_2-a_1}+e^{a_1-a_1}+e^{a_2-a_2} \\ & =4+(a_1-a_2)^2=4+c_1(E)^2-4c_2(E). \\ td_(T_X) & =1+\f{1}{2}c_1 +\f{1}{12}(c_1^2+c_2)+\f{1}{24}c_1c_2. \\ \chi(\O_X) & =\f{1}{24}c_1c_2. }\] 以上のことから, \[\eq{ \chi(E) & =\deg(\ch(E\otimes E^\vee)\td(T_X))_3 \\ & =4\chi(\O_X)+\f{1}{2}(c_1(E)^2-4c_2(E)). }\]

※同様にすれば $\dim X=2$ のとき, \[\eq{ \ch(E\otimes E^\vee) & =4+c_1(E)^2-4c_2(E) \\ \td(T_X) & =1+\f{1}{2}c_1+\f{1}{12}(c_1^2+c_2) \\ \chi(\O_X) & =\f{1}{12}(c_1^2+c_2). }\] 以上から, \[ \chi(End(E))=4\chi(\O_X)+c_1(E)^2-4c_2(E).\]