Takatani Note

代数曲線の多重種数

この記事では、曲線のリーマン・ロッホの定理: \[ l(D)-l(K-D)=\deg(D)+1-g\] に慣れてもらうために $\deg(K)$ と 多重種数 $P_m:=l(mK)$ の計算例を見せます。
(※$K$ は標準因子, $g$ は種数, $m\geq 2$ である.)

以下, 定義・記号は [Har]に合わせています。

問題
$C$ を射影代数曲線とする.
リーマン・ロッホの定理を用いて, $\deg(K)=2g-2$ であることを示せ.

[解答]
リーマン・ロッホの定理で $D=K$ とすると,
\[ l(K)-l(0)=\deg(K)+1-g\] である.
$l(K)=g$ であり, $l(0)=1$ なので上式を計算すると, $\deg(K)=2g-2$ が求まる.

問題
$C$ を $g\geq 2$ の射影代数曲線とする.
$m\geq 2$ のとき,
\[ P_m=(2m-1)(g-1) \] であることを示せ.

[解答]
$g\geq 2,\ m\geq 2$ のとき, $(m-1)K$ は豊富因子なので, $l(K-mK)=0.$
したがって,リーマン・ロッホの定理より,
\[\eq{ l(mK) & =\deg(mK)+1-g \\ & =m(2g-2)-(g-1) \\ & =(2m-1)(g-1). }\]

【おまけ】代数曲線のモジュライ

定理
$C$ を種数 $g$ の非特異射影曲線とする.
$g \geq 2$ ならば, $h^1(T_C)=3g-3.$
ただし, $T_C$ は $C$ の接層である.

[証明]
$\deg K_C=2g-2$ なので,
\[ \deg (\Omega_C\otimes \Omega_C)=\deg 2K=4g-4.\] $g \geq 2$ のとき, リーマン・ロッホの定理より,
\[ l(2K)-l(-K)=\deg 2K+1-g.\] また $l(-K)=0$ より, $l(2K)=3g-3.$
よって, $h^1(T_C)=3g-3.$

したがって、変形理論の結果から, 種数2以上の非特異射影曲線には $3g-3$ 個のパラメーターを持つ.

これはリーマンが被覆面の分岐点の考察によって得られた結果と一致する.