Takatani Note

ジョルダン標準形の求め方【例題】

\[ \newcommand{\V}{\widetilde{V}} \newcommand{\la}{\left\langle} \newcommand{\ra}{\right\rangle} \newcommand{\p}{\boldsymbol{p}} \newcommand{\q}{\boldsymbol{q}} \]

この記事では、ジョルダン標準形について次の内容を扱います。

ジョルダン標準形を求めるだけなら簡単ですが, その変換行列も求める問題は苦手な人が多いと思います。
というわけで、今回はその解説をします。

まず, ジョルダン標準形の定義と性質を復習します。

以下、行列の空白部分の成分はすべて0とする。
例えば, $\m{ 1 & \cr & 1 }$ は $\m{ 1 & 0 \cr 0 & 1 }$ を意味する.

ジョルダン標準形【定義と性質】

定義

定義 (ジョルダン細胞)
$n$ 次正方行列の対角成分はすべて $\alpha$ で, $(k,k+1)$ 成分はすべて1$(k=1,2,\cd,n-1)$ であり, それ以外の成分がすべて0であるとき, この行列を固有値 $\alpha$ の $n$ 次ジョルダン細胞といい, $J_n(\alpha)$ と表す.


$J_2(5)= \m{ 5 & 1 \cr 0 & 5 } ,\ \ \ J_3(a)= \m{ a & 1 & 0 \cr 0 & a & 1 \cr 0 & 0 & a} $

定義 (ジョルダン標準形)
2個のジョルダン細胞 $J_m(a),J_n(b)$ に対して, $m+n$ 次正方行列 \[ \m{ J_m(a) & 0 \cr 0 & J_n(b) } \] を $J_m(a),J_n(b)$ の直和といい, $J_m(a)\oplus J_n(b)$ と表す.
3個以上のジョルダン細胞についても, 同様にして直和を定義する.

ジョルダン細胞の直和で表される正方行列をジョルダン標準形という.


$J_3(a)\oplus J_2(b)= \m{ a & 1 & 0 & 0 & 0 \cr 0 & a & 1 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & a & 0 & 0 \cr 0 & 0 & 0 & b & 1 \cr 0 & 0 & 0 & 0 & b } $

定義 (変換行列)
正方行列 $A$ に対して, 適当な正則行列 $P$ を選んで $P^{-1}AP$ がジョルダン標準形になるとき, $P^{-1}AP$ を $A$ のジョルダン標準形という. また, $P$ を $A$ のジョルダン標準形への変換行列という.

定義 (固有空間の拡張)
$A$ を $n$ 次複素正方行列とする. $V_k(\l)$ を \[ V_k(\l)=\{ \v\in \C^n \mid (A-\l_i I)^k\v=\0\} \] と定める.

※定義から, $V_1(\l)$ は固有空間 $V(\l)$ と一致する. そして, $\ \ \ V_1(\l) \sub V_2(\l) \sub \cd V_k(\l) \sub \cd$ が成り立つ.

固有空間を拡張する必要性
対角化可能な行列の場合, その行列を対角化するためには, 各固有値の固有空間の基底を求めればよかった.

しかし, ジョルダン標準形の理論では対角化可能でない正方行列を扱うので, 固有空間だけではうまくいかない.
そこで, 固有空間 $V(\l)$ を拡張したベクトル空間 $V_k(\l)$ を定義した.

性質

定理A
任意の複素正方行列 $A$ は適当な正則行列 $P$ によって ジョルダン標準形 $P^{-1}AP$ に変形できる.

定理B
ジョルダン標準形は, ジョルダン細胞の個数と各細胞の次数がわかれば, 配列の仕方を除いて一意に決まる.

定理C
$A$ を $n$ 次複素正方行列とし, $\l_1,\cd,\l_n$ を固有値とする.
固有値 $\l_i$ のジョルダン細胞の個数を $r_i$ としたとき, $r_i$ は固有空間 $V(\l_i)$ の次元に等しい. すなわち, \[ r_i=\dim V(\l_i)=\dim V_1(\l_i)=\Ker(A-\l_i I). \]

定理D
2つの正方行列 $A,B$ が相似であるとき, すなわち, ある正則行列 $P$ が存在して $P^{-1}AP=B$ であるとき, 次が成り立つ.
(1) $A,B$ の固有多項式は等しい.
(2) $A,B$ の最小多項式は等しい.

[定理Dの証明]
行列の最小多項式の性質を参照してください.

では, ジョルダン標準形を求める例題を見ていこう.

ジョルダン標準形と変換行列の求め方

2次行列

例題
次の行列のジョルダン標準形とその変換行列を求めよ.
$A= \m{ 3 & 2 \cr 0 & 3 }$

解答
[解答]
$A$ の固有方程式は $(x-3)^2$ なので, $A$ の固有値は3だけであり, その重複度は2である.
\[(A-3I)= \m{ 0 & 2 \cr 0 & 0 }, \ \ \ (A-2I)^2 =\bm{O} \] より, \[ V_1(3)=\la \m{1\\0}\ra ,\ \ \ V_2(3)=\C^2 \] である.
$\dim V(3)=1$ から, 定理Cより $A$ をジョルダン標準形に変形したときのジョルダン細胞の個数は1個である.
したがって, $A$ のジョルダン標準形は \[ J_2(3)= \m{ 3 & 1 \cr 0 & 3 } \] である.

次に変換行列を求めよう.
まず, $V_2(3)$ に属すが $V_1(3)$ に属さないベクトル $\p_2\in \C^3$ を任意にとる.
ここでは計算を簡単にするため,
\[ \p_2=\m{0\\1} \] と選ぶ. 次に, \[ \p_1 =(A-3I)\p_2=\m{2\\0} \] とおくと, $\p_1\in V_1(2)$ となる. さらに, $\p_1,\p_2$ は線形独立である. これらのベクトルの間には \[\eq{ (A-3I)\p_1 & =\0 & \te{より} & A\p_1=3\p_1 \\ (A-3I)\p_2 & =\p_1 & \te{より} & A\p_2=\p_1+3\p_2 }\] が成り立つ. そこで, \[ P=\big(\p_1\ \ \p_2\big) = \m{ 2 & 0 \cr 0 & 1 } \] とおくと, $P$ は正則で, \[\eq{ AP & =A\big(\p_1\ \ \p_2\big) \\ & =\big(3\p_1 \ \ \p_1+3\p_2\big) \\ & =\big(\p_1\ \ \p_2\big) \m{ 3 & 1 \cr 0 & 3 } \\ & =PJ_2(3) }\] となるから, \[ P^{-1}AP=J_2(3) \] が成り立つ. よって求める変換行列は $P$ である.

3次行列

例題
次の行列のジョルダン標準形とその変換行列を求めよ.
$A= \m{ 2 & 1 & 2 \cr 0 & 2 & 1 \cr 0 & 0 & 2 }$

解答
[解答]
$A$ の固有方程式は $(x-2)^3$ なので, $A$ の固有値は2だけであり, その重複度は3である.
\[(A-2I)= \m{ 0 & 1 & 2 \cr 0 & 0 & 1 \cr 0 & 0 & 0 }, \ \ \ (A-2I)^2 = \m{ 0 & 0 & 1 \cr 0 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & 0 }, \ \ \ (A-2I)^3=\bm{O} \] より, \[ V_1(2)=\la \m{1 \\0 \\0}\ra ,\ \ \ V_2(2)=\la \m{1 \\0 \\0}, \m{0 \\1 \\0}\ra ,\ \ \ V_3(2)=\C^3 \] である.
$\dim V(2)=1$ から, 定理Cより $A$ をジョルダン標準形に変形したときのジョルダン細胞の個数は1個である.
したがって, $A$ のジョルダン標準形は \[ J_3(2)= \m{ 2 & 1 & 0 \cr 0 & 2 & 1 \cr 0 & 0 & 2 } \] である.

次に変換行列を求めよう.
まず, $V_3(2)$ に属すが $V_2(2)$ に属さないベクトル $\p_3\in \C^3$ を任意にとる.
ここでは計算を簡単にするため,
\[ \p_3=\m{0\\0\\1} \] と選ぶ. 次に, \[ \p_2 =(A-2I)\p_3=\m{2\\1\\0},\ \ \ \p_1 =(A-2I)\p_2=\m{1\\0\\0} \] とおくと, $\p_2\in V_2(2), \p_2\not\in V_1(2)$ となり, $\p_1\in V_1(2)$ となる. さらに, $\p_1,\p_2,\p_3$ は線形独立である. これらのベクトルの間には \[\eq{ (A-2I)\p_1 & =\0 & \te{より} & A\p_1=2\p_1 \\ (A-2I)\p_2 & =\p_1 & \te{より} & A\p_2=\p_1+2\p_2 \\ (A-2I)\p_3 & =\p_2 & \te{より} & A\p_3=\p_2+2\p_3 }\] が成り立つ. そこで, \[ P=\big(\p_1\ \ \p_2\ \ \p_3\big) = \m{ 1 & 2 & 0 \cr 0 & 1 & 0 \cr 0 & 0 & 1 } \] とおくと, $P$ は正則で, \[\eq{ AP & =A\big(\p_1\ \ \p_2\ \ \p_3\big) \\ & =\big(2\p_1 \ \ \p_1+2\p_2 \ \ \p_2+2\p_3 \big) \\ & =\big(\p_1\ \ \p_2\ \ \p_3\big) \m{ 2 & 1 & 0 \cr 0 & 2 & 1 \cr 0 & 0 & 2 } \\ & =PJ_3(2) }\] となるから, \[ P^{-1}AP=J_3(2)= \m{ 2 & 1 & 0 \cr 0 & 2 & 1 \cr 0 & 0 & 2 } \] が成り立つ. よって, 求める変換行列は $P$ である. $\square$


解答をまとめると下記のとおり.

Step1
行列 $A$ の固有多項式 $(x-2)^3$ から, 固有値 $2$ とその重複度 $3$ を得る.

Step2
$V_1(2),V_2(2),V_3(2)$ を求める.

Step3
$V_3(2)$ に属すが, $V_2(2)$ に属さないベクトル $\p_m$ をとり,
\[\eq{ \p_2 & =(A-\l I)\p_3 \\ \p_1 & =(A-\l I)\p_2 }\] と定める.

Step4
$P=\big(\p_1\ \ \p_1 \ \ \p_3\big)$ とすれば, $P^{-1}AP=J_3(2)$ となり, ジョルダン標準形 $J_3(2)$ をその変換行列 $A$ を得る.

4次行列

例題
次の行列のジョルダン標準形とその変換行列を求めよ.
$A= \m{ a & 0 & 0 & 1 \cr 0 & a & 1 & 0 \cr 0 & 0 & a & 0 \cr 0 & 0 & 0 & a }$

解答
[解答]
$A$ の固有方程式は $(x-a)^4$ なので, $A$ の固有値は $a$ だけであり, その重複度は4である.
\[(A-aI)= \m{ 0 & 0 & 0 & 1 \cr 0 & 0 & 1 & 0 \cr 0 & 0 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & 0 & 0 }, \ \ \ (A-aI)^2 =\bm{O} \] より, \[ V_1(a)=\la \m{1\\0\\0\\0}, \ \ \m{0\\1\\0\\0}\ra ,\ \ \ V_2(a)=\C^4 \] となり, $\dim V_1(a)=2,\ \dim V_2(a)=4$ である.
$\dim V(2)=2$ から, 定理Cより $A$ をジョルダン標準形に変形したときのジョルダン細胞の個数は2個である.
したがって, $A$ のジョルダン標準形は $J_3(a)\oplus J_1(a)$ または $J_2(a)\oplus J_2(a)$ のいずれかである. \[ (A-aI)^2 \neq \bm{O}\ \ \ (A-aI)^2 =\bm{O} \] より, $A$ の最小多項式は $(x-a)^2$ である. ゆえに, $A$ のジョルダン標準形は \[ J_2(a)\oplus J_2(a)= \m{ a & 1 & 0 & 0 \cr 0 & a & 0 & 0 \cr 0 & 0 & a & 1 \cr 0 & 0 & 0 & a } \] である.

次に変換行列を求めよう.
まず, $V_2(a)$ に属すが $V_1(a)$ に属さないベクトル $\p_2,\q_2\in \C^4$ をとる. ただし, $\p_2,\q_2$ が線形独立になるように任意にとる.
ここでは計算を簡単にするため,
\[ \p_2=\m{0\\0\\1\\0},\ \ \ \q_2=\m{0\\0\\0\\1} \] と選ぶ. 次に, \[ \p_1 =(A-aI)\p_2=\m{0\\1\\0\\0},\ \ \ \q_1 =(A-aI)\q_2=\m{1\\0\\0\\0} \] とおく. このとき, $\p_1,\p_2,\q_1,\q_2$ は線形独立であることに注意せよ. これらのベクトルの間には, \[\eq{ (A-aI)\p_1 & =\0 & \te{より} & A\p_1=a\p_1 \\ (A-aI)\p_2 & =\p_1 & \te{より} & A\p_2=\p_1+a\p_2 \\ (A-aI)\q_1 & =\0 & \te{より} & A\q_1=a\q_1 \\ (A-aI)\q_2 & =\q_1 & \te{より} & A\q_2=\q_1+a\q_2 }\] が成り立つ. そこで, \[ P=\big(\p_1\ \ \p_2\ \ \q_1\ \ \q_2\big) = \m{ 0 & 0 & 1 & 0 \cr 1 & 0 & 0 & 0 \cr 0 & 1 & 0 & 0 \cr 0 & 0 & 0 & 1 } \] とおくと, $P$ は正則で, \[\eq{ AP & =A\big(\p_1\ \ \p_2\ \ \q_1\ \ \q_2\big) \\ & =\big(a\p_1 \ \ \p_1+a\p_2 \ \ a\q_1 \ \ \q_1+a\q_2 \big) \\ & =\big(\p_1\ \ \p_2\ \ \q_1\ \ \q_2\big) \m{ a & 1 & 0 & 0 \cr 0 & a & 0 & 0 \cr 0 & 0 & a & 1 \cr 0 & 0 & 0 & a } \\ & =P(J_2(a)\oplus J_2(a)) }\] となるから, \[ P^{-1}AP=J_2(a)\oplus J_2(a) \] が成り立つ. よって求める変換行列は $P$ である.

ジョルダン標準形だけを求める方法【2次行列と3次行列】

以上の例題で述べた解法は, ジョルダン標準形とその変換行列についてそれら両方を求める方法である. そして, この解法は4次以上のどんな行列でも使える汎用性のある方法である.

しかし, 2次行列と3次行列の場合にもっと簡単な方法がある. 次の表を見てほしい. 表には2次行列, 3次行列のジョルダン標準形のすべての型が書かれている.

2次行列のジョルダン標準形

ジョルダン標準形 固有多項式最小多項式
(1) $\m{ \alpha & 1 \cr 0 & \alpha }$ $(x-\alpha)^2$ $(x-\alpha)^2$
(2) $\m{ \alpha & 0 \cr 0 & \alpha }$ $(x-\alpha)^2$ $(x-\alpha)$
(3) $\m{ \alpha & 0 \cr 0 & \beta }$ $(x-\alpha)(x-\beta)$ $(x-\alpha)(x-\beta)$

上の表より, 2次正方行列はジョルダン標準形の各型によって, 最小多項式が異なる.
したがって, 定理Dより次が成り立つ.

定理
2次正方行列の場合, 最小多項式がわかればジョルダン標準形は(ジョルダン細胞の順序を除いて)一意的に決まる.

3次行列のジョルダン標準形

ジョルダン標準形 固有多項式最小多項式
(1) $\m{ \alpha & 1 & 0 \cr 0 & \alpha & 1 \cr 0 & 0 & \alpha }$ $(x-\alpha)^3$ $(x-\alpha)^3$
(2) $\m{\alpha & 1 & 0 \cr 0 & \alpha & 0 \cr 0 & 0 & \alpha }$ $(x-\alpha)^3$ $(x-\alpha)^2$
(3) $\m{\alpha & 0 & 0 \cr 0 & \alpha & 0 \cr 0 & 0 & \alpha }$ $(x-\alpha)^3$ $(x-\alpha)$
(4) $\m{\alpha & 1 & 0 \cr 0 & \alpha & 0 \cr 0 & 0 & \beta }$ $(x-\alpha)^2(x-\beta)$ $(x-\alpha)^2(x-\beta)$
(5) $\m{\alpha & 0 & 0 \cr 0 & \alpha & 0 \cr 0 & 0 & \beta }$ $(x-\alpha)^2(x-\beta)$ $(x-\alpha)(x-\beta)$
(6) $\m{\alpha & 0 & 0 \cr 0 & \beta & 0 \cr 0 & 0 & \gamma }$ $(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$ $(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)$

上の表より, 3次正方行列はジョルダン標準形の各型によって, 固有多項式と最小多項式の組が異なる.
したがって, 定理Dより次が成り立つ.

定理
3次正方行列の場合, 固有多項式と最小多項式がわかればジョルダン標準形は(ジョルダン細胞の順序を除いて)一意的に決まる.

この定理を用いて次の例題を解こう.

例題
次の行列のジョルダン標準形を求めよ.
$A= \m{ -3 & 4 & -2 \cr -1 & 1 & -1 \cr 0 & 0 & -1 }$

解答
[解答]
$A$ の固有方程式は $(x+1)^3$ である.
$A$ の最小多項式は \[ (A+I)\neq \bm{O},\ \ (A+I)^2= \bm{O} \] より, $(x+1)^2$ である. したがって, $A$ のジョルダン標準形は上の表より, \[ \m{ -1 & 1 & 0 \cr 0 & -1 & 0 \cr 0 & 0 & -1 } \] である.

4次以上の行列の場合, 固有多項式と最小多項式だけではジョルダン標準形が一意に決まらないことがある.


次の $A,B$ はジョルダン標準形が異なるが, 両方とも固有多項式が $(x-\alpha)^4$ で最小多項式が $(x-\alpha)^2$ で同じである. \[ A= \m{\alpha & 1 & 0 & 0 \cr 0 & \alpha & 0 & 0 \cr 0 & 0 & \alpha & 1 \cr 0 & 0 & 0 & \alpha }, \ \ \ B = \m{\alpha & 1 & 0 & 0 \cr 0 & \alpha & 0 & 0 \cr 0 & 0 & \alpha & 0 \cr 0 & 0 & 0 & \alpha } \] ※しかし, $\dim\Ker(A-\alpha I)=2,\ \ \dim\Ker(B-\alpha I)=3$ より, 固有空間の次元は異なる.

上記の例のように4次行列の場合, 固有多項式と最小多項式に加えて「固有空間の次元」も求めないとジョルダン標準形を決定できないときがある.

【付録】

ジョルダン標準形を求めるアルゴリズム

固有多項式 $(x-a)^n$ の $n$ 次正方行列 $A$ の求め方.

Step1
$r:=\dim V(a)$ を求める.
→ジョルダン細胞の個数は $r$ である.

Step2
$A$ の最小多項式を計算して, $(x-a)^l$ だったとする.
→ジョルダン細胞の最大次数は $l$ である.

Step3
$V_1,V_2,\cd,V_l$ の次元をそれぞれ求める.
→$s_k:=\dim V_{k+1}-\dim V_k$ がわかり, $A$ のジョルダン標準形が決まる.


$A$ を$9$ 次正方行列とし, $A$ の固有多項式は $(x-a)^9,$ 最小多項式は $(x-a)^3$ とする. \[\eq{ s_3 & =\dim V_3 -\dim V_2=1, \\ s_2 & =\dim V_2 -\dim V_1=3, \\ s_1 & =\dim V_1=4 }\] とする. このとき, $A$ のジョルダン標準形を求めよ. 下図のように $s_i$ 個の $\blacksquare$ を左から横に並べる.
\[ \newcommand{\b}{\blacksquare} \begin{array}{l|llll} s_3 & \b & & & \\ s_2 &\b &\b &\b & \\ s_1 &\b & \b &\b & \b \end{array} \] 上図の各列を縦棒で区切ろう. \[ \begin{array}{l|l|l|l|l} s_3 & \b & & & \\ s_2 &\b &\b &\b & \\ s_1 &\b & \b &\b & \b \end{array} \] $s_1=4$ がジョルダン細胞の個数であり, 上図の各列の $\b$ の数 $(3,2,2,1)$ がそのジョルダン細胞の次数である.
したがって, $J_3(a)\oplus J_2(a)\oplus J_2(a)\oplus J_1(a)$