Takatani Note

シュバルツシルト時空は定曲率でない

この記事では, シュバルツシルト時空の断面曲率は一定でないことを示す.
この事実から, 4次元アインシュタイン多様体は一般に定曲率でないということになる.
(ちなみに, 3次元アインシュタイン多様体は定曲率である. 証明はこちら.)

$\R^4$ の座標を $(t,r,\t,\phi)$ とする.
シュバルツシルト時空とは
\[ g=-(1-\f{\a}{r})(cdt)^2 +(1-\f{\a}{r})^{-1}dr^2+r^2d\t^2 +r^2\sin^2\t d\phi^2 \] という計量を持つ空間のことである. (ただし, $\a$ は定数.)
また, $\R^4$ の中で $r=\a$ を満たす点を除くことにする.
$(cdt)^2$ の $c$ は気にせずに無視してよい. 気になる人は相対性理論の 教科書を参照してほしい.

$$ \d_0=\f{\d}{\d t},\ \d_1=\f{\d}{\d r}, \ \d_2=\f{\d}{\d\t},\ \d_3=\f{\d}{\d \phi} $$ とおく.
$\sigma=< (\d_1)_p,(\d_2)_p >$ を $T_p(M)$ の2次元ベクトル部分空間とする.
このとき, 断面曲率 $K_\sigma$ が,
$$ K_\sigma=-\f{R_{1212}}{G_{1212}}= -\f{\a}{2r^3} $$ である, ということを今から示す.
ただし, $$ G_{1212}=g_{11}g_{22}-g_{12}g_{21} =g_{11}g_{22}=r^2(1-\f{\a}{r})^{-1} $$ である. これが示せたら, $r$ は定数でないので, $K_\sigma$ は定数でない.
従って, シュバルツシルト時空は定曲率でないことが示せたことになる.

計算
$R_{1212}$ を求めたい.
公式 $R_{ijkl}=R_{ijk}^{\h m}g_{ml}$ より,
$$ R_{1212}=R_{121}^{\h m}g_{m2}=R_{121}^{\h 2}g_{22}. $$ ($\be m\neq 2$ のとき, $g_{m2}$=0.)
従って, $R_{121}^{\h 2}$ が求まれば, $R_{1212}$ が求まる.
公式:
$\ R_{ijk}^{\h l}=\d_i\G_{jk}^l-\d_j\G_{ik}^l+\G_{jk}^m \G_{im}^l-\G_{ik}^m\G_{jm}^l$
を用いると,
$$ R_{121}^{\h 2}=\d_1\G_{21}^2-\d_2\G_{11}^2 +\G_{21}^m\G_{1m}^2-\G_{11}^m\G_{2m}^2 $$
今から, 上式の右辺の各項を求めていく.
$\d_1\G_{21}^2=-1/r^2.\ \ \ (\because\ \G_{21}^2=1/r.)$

$\d_2\G_{11}^2=0.\ \ \ (\because\ \G_{11}^2=0.)$

$\G_{21}^m\G_{1m}^2=1/r^2.$
$(\because\ \G_{21}^0=\G_{21}^1=0,\ \G_{21}^2=\G_{12}^2=1/r,\ \G_{21}^3=0.)$

\[\G_{11}^m\G_{2m}^2 =\f{-\a}{2(1-\frac{\a}{r})r^3}.\] $(\because\ \G_{11}^0=\G_{11}^2=\G_{11}^3=0,\ \G_{11}^1=\G_{11}^m\G_{2m}^2 =\f{-\a}{2(1-\frac{\a}{r})r^3}.)$

よって,
\[R_{121}^{\h 2}=\f{\a}{2(1-\frac{\a}{r})r^3}.\] これにより,
\[ R_{1212}=R_{121}^{\h 2}g_{22} =\f{\a}{2(1-\frac{\a}{r})r}.\] 従って,
\[K_\sigma=-\f{R_{1212}}{G_{1212}}= -\f{\a}{2r^3}.\]